金融機関のコンプライアンス担当が Claude Code を使ったら、規程・マニュアル整備の工数が大幅に削減できた
「また法改正の対応が来た」
地方銀行のコンプライアンス部の担当者は、金融庁から届いた通達を見ながら頭を抱えた。改正される規制への対応として、社内規程を10本以上改訂し、関連する業務マニュアルを更新し、全行員向けの研修資料を作り直す必要がある。一つひとつの文書は分量が多く、改訂の整合性を確認しながら書き直す作業は膨大だ。
金融機関のコンプライアンス業務は、法令改正・監督指針の変更・行政処分事例の公表——常に変化する外部環境に対応し続けることが求められる。その対応のたびに発生する「規程を書き直す」「マニュアルを更新する」「研修資料を作る」という文書作業が、コンプライアンス担当者の時間を大量に消費している。
Claude Code は、この文書作業のコストを大きく下げる道具として使える。
1. 金融機関のコンプライアンス文書の特徴
金融機関のコンプライアンス関連文書は、他の業界の文書とは異なる重さがある。
法令・監督指針との整合性が必須。社内規程・業務マニュアルは、法令・金融庁監督指針・自主規制規則との整合性が求められる。不整合があると、検査・モニタリングで指摘を受ける。
量と更新頻度が高い。金融機関は業態に応じて銀行法・金融商品取引法・保険業法・犯罪収益移転防止法・個人情報保護法など多数の法令の適用を受ける。それぞれに関連する規程・マニュアルがあり、法改正のたびに更新が必要になる。
対象読者の幅が広い。コンプライアンス規程は法務・コンプライアンス担当者だけでなく、営業・窓口・管理部門の全行員が対象になる。専門家向けの正確な記述と、現場が実際に使えるわかりやすさの両立が求められる。
証跡の管理が重要。規程の改訂履歴、研修の受講記録、内部通報の対応記録——文書の管理と証跡の保全が検査対応の基盤になる。
Claude Code は、「正確な情報を渡して、適切な文書形式に整える」という作業の効率化に使える。最終確認は必ず人間が行うが、たたき台を作る速度が大きく変わる。
2. 社内規程の作成・改訂
法改正対応の規程改訂
法令改正に伴う規程改訂は、「変更点の特定→規程の該当箇所の修正→改訂理由の整理」という流れをたどる。Claude Code に「改正の内容」と「現行規程の該当部分」を渡すと、改訂案のたたき台が出てくる。
Claude Code への入力例:
以下の法令改正内容をもとに、社内規程の改訂案のたたき台を作成してください。
【法令改正の概要(担当者メモ)】
- 改正内容: 犯罪収益移転防止法施行規則の改正
- 主な変更点:
1. 顧客管理(取引時確認)の厳格化: 実質的支配者の確認方法が変更
2. リスクベース・アプローチの強化: 高リスク顧客に対する強化確認義務
3. 取引記録の保存期間: 一部取引で保存期間が延長
【現行規程の該当条文(一部抜粋)】
第○条(取引時確認の方法)
「当社は、顧客と取引を行う際、氏名・住居・生年月日・取引を行う目的および職業を確認するものとする…」
【改訂の方向性】
- 実質的支配者の確認手続きを規程に明記する
- 高リスク顧客の定義と対応方法を追加する
- 保存期間の変更を反映する
規程文体(「〜するものとする」「〜に限る」)で改訂案を作成し、改訂前後の対比表もあわせて作成してください。
新規規程の策定
新しい業務・サービスを開始する際の新規規程の策定も、Claude Code で対応できる。
Claude Code への入力例:
以下の情報をもとに、新規業務に対応する社内規程のたたき台を作成してください。
【新規業務の概要】
- 業務名: デジタルコンテンツを利用した投資教育サービス
- 概要: 顧客向けに投資に関する動画・記事コンテンツを提供するオンラインサービス
- 関連法令: 金融商品取引法(広告規制・投資助言業・情報提供)
【規程に含めてほしい要素】
1. 目的・適用範囲
2. コンテンツの審査・承認フロー
3. 禁止事項(断定的判断の提供・誇大広告等)
4. 記録の保存・管理
5. コンプライアンスチェックの体制
規程形式で、金融機関として適切な管理体制が示される内容としてください。
3. 業務マニュアルの整備
窓口対応マニュアルの作成・更新
顧客対応の現場で使う業務マニュアルは、「何をどの順番でやるか」が明確に書かれている必要がある。法令改正や新サービス導入のたびに更新が必要で、その頻度の高さが担当者の負担になる。
Claude Code への入力例:
以下の情報をもとに、窓口担当者向けの業務マニュアルを作成してください。
【対象業務】NISA口座の開設手続き
【手続きの流れ(担当者メモ)】
1. 申込書類の受理(本人確認書類・申込書)
2. 本人確認の実施(顔写真付き書類の確認)
3. 既存口座の確認(他社でのNISA口座の有無の確認)
4. システム入力(口座開設申請の入力)
5. 書類の回収・保管(本人確認書類のコピー・申込書)
6. 受付完了の案内(完了通知・口座利用開始時期の案内)
【よくある質問・注意事項】
- 「他社でNISA口座を持っている場合はどうするか」→ 同一年内の他社との重複開設はできない
- 「申込書の記載漏れがあった場合の対応」→ その場で再記入を依頼・記入例を見せる
- 「未成年者の口座開設」→ 親権者の同席・署名が必要
現場のスタッフが実際に使えるマニュアル形式(フロー図の代わりにステップ形式)で作成してください。
リスク管理マニュアルの更新
AML(マネーロンダリング対策)・不正検知・情報セキュリティなど、リスク管理に関するマニュアルも、Claude Code でたたき台を作れる。
4. コンプライアンス教育資料の作成
全行員向けeラーニング教材
毎年実施するコンプライアンス教育のeラーニング教材・テスト問題は、作成に時間がかかる文書の代表格だ。Claude Code にテーマと教育すべき内容を渡すと、教材の下書きが出てくる。
Claude Code への入力例:
以下のテーマで、全行員向けコンプライアンス教育の教材を作成してください。
【テーマ】情報セキュリティ・個人情報保護の基礎
【教育すべき内容】
1. 個人情報とは何か(定義・なぜ重要か)
2. 金融機関が扱う個人情報の種類(顧客情報・従業員情報)
3. 情報漏えいが起きるパターン(メールの誤送信・持ち出しのミス・内部不正)
4. 正しい取り扱い方(持ち出し・廃棄・デバイス管理)
5. 万が一インシデントが発生したときの対応(報告の流れ)
6. 確認テスト(5問)
【対象者】
- 全行員(IT知識は問わない)
- 新入行員でも理解できるレベル
【形式】
- 各セクション:説明文 + 事例(○×事例)
- 最後に確認テスト
分かりやすく、かつ緊張感を持って読めるトーンで作成してください。
研修後のレポート様式
研修後に行員が提出する「研修受講レポート」の様式・記入例も、Claude Code で作れる。「今回の研修で学んだこと・業務でどう活かすか」を行員が自分の言葉で書けるよう、適切な設問設計のアドバイスを含んだ様式が出てくる。
内部通報制度の案内文
内部通報制度を全行員に周知するための案内文・ポスターの文章も、Claude Code が対応できる。「通報できる内容・通報の方法・通報者の保護」を平易な言葉でわかりやすく伝える文章が出てくる。
5. 当局対応・検査準備書類
金融庁ヒアリングへの準備資料
金融庁のオンサイト検査・オフサイトモニタリングへの対応において、事前に求められる資料・ヒアリングシートへの回答文書も、Claude Code で下書きを作れる。
Claude Code への入力例:
以下のヒアリング項目に対する回答文書のたたき台を作成してください。
【ヒアリング項目(例)】
「AML(マネーロンダリング対策)に関する管理態勢について、以下の点を説明してください:
1. リスクベース・アプローチの具体的な内容
2. 高リスク顧客に対するモニタリング体制
3. 疑わしい取引の検知・届出体制」
【当社の現状(担当者の把握)】
- リスクの評価: 業種・取引類型・地域等でリスクスコアを設定
- 高リスク顧客: 定期的な取引モニタリングと担当役員承認の取引管理
- 疑わしい取引: システムによるアラート発生→担当部署が審査→届出判断
行政当局に対する説明として適切なトーンで、具体的な管理態勢が伝わるよう作成してください。
行政処分事例を踏まえた自点検レポート
金融庁から公表される行政処分・業務改善命令の事例を踏まえた「自点検レポート」の作成も、Claude Code で効率化できる。「処分事例の概要」と「自社の現状」を渡して「自点検の形式でまとめてください」と指示すると、処分事例と自社の比較が整理された文書が出てくる。
6. 反社会的勢力対応・AML関連文書
反社確認マニュアルの整備
取引先・顧客の反社会的勢力との関係確認に関するマニュアルは、実務で使える具体的な内容が必要だ。「確認の手順・確認が取れない場合の対応・社内報告の流れ」を整理した実務マニュアルのたたき台が、Claude Code で作れる。
疑わしい取引レポートの記載の整備
疑わしい取引の届出(STR)に関連する内部報告書・審査記録の標準的な記載様式の整備も、Claude Code でたたき台を作ることができる。「何を・どう書くべきか」の標準を整えることで、現場担当者の記載の質が上がる。
7. 顧客向けコンプライアンス説明文書
重要事項説明書の平易化
金融商品を顧客に販売する際の重要事項説明書は、法令で定められた記載事項が多く、顧客にとって読みにくい文書になりがちだ。法的に必要な内容を保ちながら、顧客が理解しやすい言葉で整える——この作業に Claude Code が使える。
Claude Code への入力例:
以下の重要事項説明書の内容を、顧客が理解しやすい言葉に整えてください。
【現行の記載(一部抜粋)】
「当ファンドへの投資には、主として以下のリスクが存在します。価格変動リスク:組入れ有価証券の価格変動により、基準価額が下落し投資元本を下回るリスクがあります。信用リスク:有価証券の発行者の経営・財務状況の悪化または倒産等により、元本や利息の支払い不能となるリスクがあります…」
【整えるポイント】
- 法的な正確さは維持する
- 「投資初心者でも理解できる」わかりやすさを加える
- 重要なリスクが埋もれないよう、視覚的にわかりやすくする
整えた文章と、どこを・なぜ変えたかのコメントをあわせて出力してください。
ご意見・ご要望への回答文の整備
顧客から受けたクレーム・意見への回答文の標準様式の整備も、Claude Code で対応できる。「誠意が伝わり、かつコンプライアンス上問題ない表現」のバランスを取った回答文のひな型が作れる。
8. claudecode道場で学ぶ
claudecode道場は、非エンジニアの経営者・担当者が Claude Code を業務で使えるようになるための研修プラットフォームだ。malna株式会社が運営しており、プログラミングの知識は一切不要。全19章が無料で公開されている。
金融機関のコンプライアンス業務のように「正確性が最優先」という文書では、Claude Code の使い方が特に重要だ。「どう情報を渡せば精度の高いたたき台が出るか」「何を人間が必ず確認すべきか」の使い分けを体系的に学べる。
9. まとめ
社内規程の改訂・業務マニュアルの整備・コンプライアンス教育資料の作成・当局対応書類の準備——金融機関のコンプライアンス部門は、常に変化する法令・監督指針への対応と、大量の文書作業を同時にこなす必要がある。
Claude Code は、「情報とたたき台の間を埋める」作業を大幅に効率化する。最終的な確認・判断は必ず担当者が行うという前提の上で、たたき台を作る時間が短縮されることで、担当者がより本質的な業務——リスクの評価・体制の設計・現場への周知——に使える時間が増える。
malnaでは、金融機関のコンプライアンス部門への Claude Code 導入支援も行っている。「規程改訂の効率化から試したい」「教育資料の作成に活用したい」という場合は、まずご相談いただきたい。
Claude Code 導入支援について malna に相談する
※本記事に含まれる効果の数値は、特定の業務条件を前提とした参考値です。実際の効果は業務内容・環境・習熟度によって異なります。


