銀行員が Claude Code を使ったら、稟議書と訪問報告書の作成時間が9割減った
「今日の訪問、全部で8件。報告書、全部書かないといけない」
地方銀行の法人営業担当は、夕方5時を過ぎたオフィスで、訪問メモの束を前にため息をついた。午前に3社、午後に5社を回った。それぞれで聞いた内容——業況、設備投資の計画、後継者問題、競合の動き——は頭の中にある。でも、それを「訪問報告書」という形式に落とし込む作業が、毎日2〜3時間を奪っていく。
稟議書になると、さらに重い。融資案件が動けば、企業の概況・財務分析・資金使途・返済計画・リスク評価を体系的にまとめた文書が必要になる。内容はわかっている。数字も手元にある。でも「文章として整える」作業で半日が消える。
銀行の仕事の本質は、企業の状況を正確に把握し、適切な金融サービスを提供することにある。その判断力と関係構築に使いたい時間が、文書作成に吸い取られていく。
Claude Code を使うと、「情報がある状態」から「文書が完成した状態」までの距離が、劇的に縮まる。
1. 銀行の文書業務が抱える構造的な重さ
銀行・信用金庫・地方銀行の法人営業担当が日常的に向き合う文書には、民間の一般的なビジネス文書とは異なる特徴がある。
正確性と形式の厳格さ。稟議書は与信判断の根拠となる公式文書であり、数字の誤り・表現のあいまいさは許されない。審査部門・上席が読んで判断できるレベルに仕上げる必要がある。
ひとりの担当者が抱える件数の多さ。法人営業担当は数十社から百社規模の担当先を持つ。それぞれに訪問報告書があり、案件が動けば稟議書・提案書・審査書類が発生する。量をこなしながら質を維持することが求められる。
「こう書くべき」という暗黙の型がある。稟議書には「企業概要→業績推移→資金需要→返済財源→担保・保証→総合評価」という論理の流れがある。この型に情報を当てはめていく作業は、構造化された思考を要するが、慣れてしまえば型どおりの繰り返しでもある。
訪問報告書は量が多く、後回しにされがち。訪問した日に書けばいいが、次の訪問・電話対応・内部調整で夜になる。記憶が薄れた状態でメモから報告書を起こす作業は、精度も速度も落ちる。
Claude Code は、この「型に情報を当てはめる」部分を大幅に効率化する。
2. 訪問報告書の作成
訪問メモから報告書へ
訪問時に取ったメモ・走り書きを Claude Code に渡すと、報告書形式に整理してくれる。
Claude Code への入力例:
以下の訪問メモをもとに、法人営業の訪問報告書を作成してください。
【訪問先】
- 会社名: ○○製造株式会社(担当者が後で記入)
- 担当者: 社長・経理部長
- 訪問目的: 定期訪問・業況確認
【訪問メモ(箇条書き)】
- 今期の売上は前年比8%増で推移中。主力取引先への納入が好調
- 設備の老朽化が課題で、2〜3年以内に更新を検討しているとのこと。金額感は1億円前後
- 後継者については長男が数年後に入社予定。現社長は70代で引退を意識し始めている
- 仕入先の原材料価格上昇が続いており、価格転嫁が課題
- 資金繰りは今のところ問題なし。預金残高は厚め
- 新規の設備投資融資について、時期が来たら相談したいという意向あり
【報告書に含めてほしい要素】
- 業況・財務状況
- 経営課題・ニーズ
- 次回アプローチの方向性
- 担当者所見
行内の訪問報告書として適切なフォーマットで作成してください。
このメモ1つから、業況・課題・次回アクションが整理された報告書の下書きが出てくる。担当者は数字の確認と固有名詞の入力だけで完成できる。
複数訪問分の一括作成
1日に複数社を訪問した場合も、各社のメモをまとめて渡して「それぞれの訪問報告書を作成してください」と指示すると、社ごとに分けた報告書が出てくる。
Claude Code への入力例:
本日の訪問先3社それぞれの訪問報告書を作成してください。
【訪問先A: ○○商事】
- 午前10時訪問
- 業況: 今期は厳しい。主力得意先の発注量が減少
- 課題: 新規取引先の開拓が急務
- 資金面: 短期の運転資金を増額したい意向
- 次回: 来月、具体的な資金需要を確認
【訪問先B: △△建設】
- 午後2時訪問
- 業況: 受注は堅調。公共工事・民間工事とも順調
- 設備投資: 重機の買い替えを検討中(数千万円規模)
- 後継者: 2代目がすでに社内で実務を担当中
- 次回: 設備投資タイミングで融資相談を受ける予定
【訪問先C: □□食品】
- 午後4時訪問
- 業況: 新製品が好調で売上増
- 課題: 製造ラインの拡張を検討
- 補助金: 設備投資の補助金活用に興味あり
- 次回: 補助金情報を調べて持参する
各社の報告書を、担当者所見も含めて作成してください。
3. 稟議書のたたき台作成
運転資金融資の稟議書
運転資金融資の稟議書は、企業の業況・借入需要・返済計画を論理的にまとめる必要がある。Claude Code に「融資案件の概要と収集した情報」を渡すと、稟議書のたたき台が出てくる。
Claude Code への入力例:
以下の情報をもとに、運転資金融資の稟議書のたたき台を作成してください。
【融資先情報】
- 業種: 食料品卸売業
- 設立: 30年以上の老舗
- 従業員: 45名
- 主要取引先: スーパーマーケット・ホテル向けが中心
【財務情報(概要)】
- 今期売上: 約12億円(前年比+5%)
- 経常利益: 約3,000万円(利益率2.5%)
- 自己資本比率: 32%
- 既存借入: 3,000万円(当行2,000万円・他行1,000万円)
【融資内容】
- 融資種別: 短期運転資金
- 融資希望額: 2,000万円
- 資金使途: 仕入資金(年末繁忙期の在庫確保)
- 返済方法: 6ヶ月後に一括返済(売掛金回収後)
【担保・保証】
- 代表者保証あり
- 担保なし(信用貸し)
【資金需要の背景】
- 年末の繁忙期に向けて仕入量が増加
- 売掛金の回収サイトが45日のため、一時的な資金不足が発生する見込み
稟議書の構成: 借入先概況→財務状況→融資内容→返済財源→リスク評価→総合評価、の順で作成してください。 金額は担当者が確認・修正するため、仮の数字のまま作成しても構いません。
稟議書の論理構造——なぜこの企業に融資するのか、返済財源はどこにあるのか、リスクは何か——が整理されたたたき台が出てくる。担当者はそこに確認済みの数字と固有情報を入れ込んで仕上げる。
### 設備投資融資の稟議書
設備投資融資の稟議書は、設備の内容・投資の効果・返済計画の整合性を示す必要がある。
**Claude Code への入力例:**
以下の情報をもとに、設備投資融資の稟議書のたたき台を作成してください。
【融資先概況】
- 業種: 金属加工業(自動車部品メーカー向け)
- 規模: 売上約8億円・従業員60名
- 財務状況: 黒字安定・自己資本比率40%
【設備投資の内容】
- 設備名: CNC旋盤(最新型)2台
- 購入金額: 8,000万円(メーカー見積済み)
- 投資効果: 加工精度の向上・生産効率20%アップ・不良率削減
- 背景: 主要取引先(自動車メーカー1次サプライヤー)から精度向上の要請があり、受注継続のために必要
【融資内容】
- 融資希望額: 6,000万円(自己資金2,000万円)
- 返済期間: 7年
- 返済方法: 元利均等返済
- 担保: 購入設備を担保(動産担保)・代表者保証
【返済財源の考え方】
- 年間の減価償却費: 約1,140万円(7年定率法)
- 生産効率化による追加利益: 年間500万円見込み
- 返済額: 年間約1,000万円(試算)
融資先の競争力維持の観点も含めて、稟議書のたたき台を作成してください。
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## 4. 融資提案書の作成
### 新規融資の提案書
既存取引先に対して新規の融資商品・資金調達方法を提案する場合の提案書も、Claude Code で効率化できる。
**Claude Code への入力例:**
以下の情報をもとに、既存取引先への融資提案書を作成してください。
【提案先の状況】
- 取引歴: 15年
- 業種: 建設業(地域の中堅業者)
- 現在の取引: 短期融資(運転資金)のみ
- 課題として把握していること:
- 事業承継を3〜5年後に控えている
- 後継者(長男)の持株比率を高めたい
- 相続税対策を考え始めている段階
【提案したい商品・サービス】
- 事業承継ローン(後継者の自社株取得資金)
- 遺言信託・事業承継コンサルティング(信託銀行との連携)
【提案の方向性】
- まずは「事業承継を一緒に考えましょう」という姿勢で、押しつけにならない提案
- 自行の取引深化につながる提案書として
提案書の構成は「現状の把握→課題の整理→提案内容→当行のサポート体制→次のステップ」でお願いします。
### 補助金・制度融資の案内書
中小企業向けの補助金・制度融資(信用保証協会付きローン・日本政策金融公庫との協調融資等)の案内文も、Claude Code で作れる。「制度の概要・対象要件・申請の流れ」を渡して「顧客向けの分かりやすい案内書にしてください」と指示すると、専門用語を平易な言葉で説明した案内書が出てくる。
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## 5. 審査部門への説明資料
### 案件照会・事前相談
融資案件を審査部門に持ち込む前の「案件照会」や「事前相談」の際に提出する資料も、Claude Code で下書きを作れる。
「この案件を審査に上げる前に、懸念点と自分なりの評価を整理したい」という状況で、Claude Code に「案件の概要と懸念点」を渡すと、審査担当者が見たときに納得感を持てる説明の構造が出てくる。
**Claude Code への入力例:**
以下の融資案件について、審査部門への事前相談用の説明資料(論点整理メモ)を作成してください。
【案件概要】
- 融資先: 中小の飲食チェーン(居酒屋5店舗)
- 融資内容: 新店舗出店資金 5,000万円・10年返済
- 現状の取引: 既存融資1億円(返済中・遅延なし)
【肯定的な要素】
- 既存取引での返済実績は良好
- 直近2期の業績が改善傾向(コロナ後の回復)
- 出店予定地のテナント確保済み、賃料条件も確認済み
【懸念点】
- 飲食業の業績変動リスク
- 既存5店舗の収益安定性にバラつきあり(稼働状況に差がある)
- 新店舗が軌道に乗るまでの初期費用負担
【担当者の評価】
- 実績・関係性を踏まえると支援したい案件だが、業績のバラつきをどう評価するか悩んでいる
- 出店先立地のポテンシャルは高いと判断している
審査担当者が論点を理解しやすいよう、事前相談メモとしてまとめてください。
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## 6. 事業性評価レポートの作成
### 担当先企業の事業性評価
金融庁のガイドラインに沿った「事業性評価」は、担当先企業の本質的な強みと課題を評価する取り組みだ。財務数値だけでなく「なぜこの会社が強いのか」「業界の中でどんな位置にあるのか」を言語化することが求められる。
Claude Code に担当先企業の業況・業界動向・強みを箇条書きで渡すと、事業性評価レポートの素材が整理された文書が出てくる。
**Claude Code への入力例:**
以下の情報をもとに、担当先企業の事業性評価レポートの素材を作成してください。
【企業の基本情報】
- 業種: 精密部品製造業(電子機器メーカー向け)
- 歴史: 創業45年
- 強み(担当者の把握):
- 特定の精密加工技術では地域トップクラス
- 顧客の設計段階から参加する「開発型受注」モデル
- 主要取引先3社との取引年数は20年以上
- 課題:
- 経営者が60代後半、後継者がいない
- 顧客集中(上位3社で売上の70%)
- 若手技術者の採用・育成が難しい
- 業界の動向:
- 電子機器の高機能化で精密部品への需要は堅調
- 中国・東南アジア企業との価格競争は一部で発生
- ニッチ技術を持つ企業は高付加価値案件を確保できている
事業の持続可能性・潜在リスク・金融機関としてのサポートの方向性を含めて作成してください。
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## 7. 顧客向けコミュニケーション文書
### 融資条件変更の案内文
金利改定・返済条件の変更・証書切替のご案内など、取引先に送る書面も Claude Code で下書きを作れる。「変更内容の骨格」を渡して「丁寧なビジネス文書として整えてほしい」と指示すると、顧客が読んで理解できる案内書の下書きが出てくる。
### 経営改善支援・返済条件緩和の打診文書
業況が厳しくなった取引先への経営改善支援の提案・返済条件緩和の打診文書は、言葉の選び方が顧客との関係性を左右する。「支援する姿勢を明確に、かつ金融機関としての立場を保った言葉」のバランスは難しい。Claude Code に「状況と伝えたい内容」を渡して「この状況に適した言葉で作成してほしい」と指示すると、バランスの取れた文書の下書きが出てくる。
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## 8. 信用金庫・地銀の特有業務
### 地域の事業者向け勉強会・セミナーの案内文
信用金庫・地方銀行が主催する経営セミナー・勉強会の案内文も、Claude Code で対応できる。「テーマ・日時・対象者・内容の骨格」を渡して「地域の経営者が参加したくなる案内文にしてください」と指示すると、適切なトーンの案内文が出てくる。
### 事業承継・M&A関連の提案書
地域の中小企業では事業承継が大きな課題だ。「後継者がいない企業への事業承継の提案書」「第三者承継(M&A)のスキーム説明書」も、Claude Code を使えば担当者が概要を整理した状態から具体的な文書にするまでの時間が短縮できる。
**Claude Code への入力例:**
以下の状況の顧客に、事業承継の選択肢を提案する提案書を作成してください。
【顧客の状況】
- 業種: 老舗の和菓子製造販売(創業60年)
- 経営者: 社長(68歳)
- 後継者: 子供はいるが、事業継承の意思なし
- 従業員: 12名・地域で愛されているブランド
- 財務: 黒字安定・借入なし
【提案したい選択肢】
- 親族外承継(幹部社員への承継)
- M&A(地域の食品会社・ファンドへの売却)
- 当行のサポートの内容(M&Aマッチング・株価算定・承継計画策定支援)
【トーンの希望】
- 「会社をどう存続させたいか」を一緒に考えるパートナーとしての立場で
- 押し売り感なく、選択肢を広げる提案として
提案書の形式で、A4・2ページ程度の分量で作成してください。
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## 9. claudecode道場で学ぶ
claudecode道場は、非エンジニアの経営者・担当者が Claude Code を業務で使えるようになるための研修プラットフォームだ。malna株式会社が運営しており、プログラミングの知識は一切不要。全19章が無料で公開されている。
銀行・信用金庫の業務では、「正確な情報を渡して、適切な形式の文書を作る」という指示設計が重要になる。claudecode道場では、この指示設計を体系的に学べる。稟議書・報告書の品質は、Claude Code への指示の質で決まる。
[claudecode道場を見る](https://claudedojo.com)
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## 10. まとめ
訪問報告書・稟議書・融資提案書・事業性評価レポート——銀行・信用金庫の法人営業担当者が日々向き合う文書業務は、「情報を持っている」ことと「文書が完成している」ことの間に大きなギャップがある。そのギャップを埋める作業——型に情報を当てはめ、論理を整理し、言葉を選ぶ——に、営業担当者の時間の多くが費やされている。
Claude Code は、「渡した情報をもとに文書の下書きを作る」という作業を引き受けることで、担当者が「顧客と向き合う」「案件の本質を考える」「関係を深める」ことに使える時間を増やす。
1日8件の訪問報告書を30分で仕上げる。稟議書のたたき台を1時間以内で作る。提案書を翌日には持参できる。そういった働き方の実現が、Claude Code で近づいてくる。
malnaでは、銀行・信用金庫・地方銀行の Claude Code 導入支援を行っている。「まず訪問報告書の効率化から試したい」「稟議書の作成に使えるか確かめたい」という場合は、まずご相談いただきたい。
[Claude Code 導入支援について malna に相談する](https://malna.co.jp/service-ai-agent/)
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※本記事に含まれる効果の数値は、特定の業務条件を前提とした参考値です。実際の効果は業務内容・環境・習熟度によって異なります。



