人材紹介会社で Claude Code を使ったら、求職者フォロー・面接対策・推薦状が1件1時間から15分になった
1人のアドバイザーが同時に担当する求職者は平均30〜50名。1日の面談は5〜8本。
この数字を聞いたとき、「それは無理だ」と感じる方はほとんどいないのではないでしょうか。人材紹介業の現場で働いた経験がある方なら、むしろ「それが普通だ」と感じるはずです。
問題は、この業務量の中で「一人ひとりに向き合った言葉を書く」という仕事が、じわじわと形骸化していくことです。最初は丁寧に書いていたフォローメールが、2ヶ月後には定型文に近くなっていく。面接対策の資料も「だいたいこれを送っておけば」という一枚になっていく。担当し始めて3年目のアドバイザーが「言葉が枯れてきた気がする」と話すとき、それは能力の問題ではなく、担当件数と時間という構造の問題です。
Claude Code はこの問題に直接使えます。情報を渡して文章を作る補助として使うことで、「マッチングの質を下げずにスピードを上げる」という本来難しかった両立が、実現しやすくなります。
1. CAとRAで活用場面が違う
Claude Code を人材紹介業に導入するとき、まずCA(キャリアアドバイザー)とRA(リクルーティングアドバイザー)で使い方の重心が異なることを整理しておくと、活用が具体的になります。
CAが使う場面は、求職者との接点に関わる文書が中心です。求職者へのフォローメール、レジュメ(職務経歴書)の修正アドバイス、面接前の対策資料、内定後のお祝いと今後のフォロー文——これらはすべて「この人だけに向けた言葉」でなければ意味がないにもかかわらず、件数が多いと全員分を個別に書く時間がとれません。
RAが使う場面は、企業側との接点に関わる文書が中心です。求人票の作成・リライト、候補者の推薦状(企業への紹介文)、そして企業の採用ニーズに合わせたポジション提案書——これらは一件あたりの作成時間が長く、かつ企業担当者に読んでもらえる質が求められます。
どちらも「情報を渡して文章を形にする」という作業に Claude Code を使う点は共通です。判断はアドバイザーが行い、言語化の工程を補助させる、という使い方です。
2. CAが使う4種の文書
2.1. 求職者フォローメール
フォローメールは、送る理由が明確なほど求職者に響きます。「面談後のお礼」「求人を紹介する前の一言」「書類通過後のフォロー」「面接後の声かけ」——これらは文脈が異なるため、本来は毎回内容を変えるべきです。ただ、30〜50名を担当していると、全員に個別のメールを書く時間はとれません。
Claude Code への使い方は、求職者の状況と送りたい内容の骨格を箇条書きで渡すことです。
指示の例:
以下の求職者に、書類選考通過の連絡と面接前フォローのメールを書いてください。
求職者の状況:
- 28歳・女性
- 現職: 百貨店での接客販売(在職6年)
- 転職理由: 土日休みを確保して家族との時間を増やしたい
- 志望: BtoB営業・未経験可
- 今回の応募先: ITツール会社の内勤営業(営業サポート)
- 書類選考通過。来週火曜に一次面接
伝えたいこと:
- 書類通過のお知らせ
- 面接で特に伝えてほしい点(接客で培ったヒアリング力を強調する)
- 不安があれば連絡してほしいという一言
トーン: 丁寧だが温かみがある。仕事文書として整っている。
出てきた文章に、担当者が知っている求職者固有の一言(たとえば「先週の面談で話してくれたお子さんのこと」など)を加えれば、定型文とは全く異なるメールになります。
2.2. レジュメ修正アドバイス
求職者から届いた職務経歴書を読んで、「ここをこう直した方が通りやすい」と伝える作業は、アドバイザーの専門性が最も問われる工程の一つです。ただ、文章として丁寧にフィードバックを書くことに毎回30分かかっていると、対応できる件数が限られます。
Claude Code に職務経歴書の現状と、修正してほしいポイントの骨格を渡すと、求職者に伝えるための修正アドバイス文の下書きが出てきます。
指示の例:
以下の求職者の職務経歴書の修正アドバイスを、求職者本人に送るメール文として書いてください。
現状の課題:
- 業務内容が「〜を行いました」という受け身の表現で羅列されている
- 数値や実績が一切書かれていない
- 自己PRが「コミュニケーション能力があります」のみで具体がない
伝えたいアドバイス:
1. 業務内容は「〜を担当し、〜を実現した」の形で能動的に書き直す
2. 実績は「月○件の対応」「リピート率○%」など数字を入れる(記憶ベースで構わない旨も添える)
3. 自己PRはエピソードを1つ書く形にする(例を1つ示す)
トーン: 指摘ではなく「一緒に良くしていきましょう」という伴走感。
2.3. 面接対策資料
面接の前に求職者に送る対策資料は、「この会社の面接でよく出る質問」「この求職者が特に準備すべき点」の2つを合わせた内容が理想です。ただし、企業ごとの面接の傾向・求職者ごとの弱点を組み合わせた資料を毎回ゼロから作ると時間がかかります。
Claude Code に企業の特徴・求人の要件・求職者の経歴と懸念ポイントを渡すと、面接対策資料のたたき台が出てきます。
指示の例:
以下の面接に向けた対策資料を作成してください。
面接先の企業情報:
- SaaS企業(HR系ツール)
- 一次面接: 現場マネージャー2名。重視するポイント: 自走できるか、PDCAを回してきたか
- 企業文化: フィードバックを率直にする風土、実力主義
求職者の経歴と懸念点:
- 前職: 中小製造業の総務・人事(5年)
- 強み: 採用業務の全フロー経験、社内制度の整備経験
- 懸念点: IT/SaaS企業での就業経験がない。ツールを使いこなしているかを問われる可能性
作成してほしい内容:
1. 想定される質問リスト(7〜10問)
2. 各質問に対する回答の方向性(答え方のヒント)
3. 逆質問の例(2〜3個)
面接対策資料は、そのまま渡せるものを求めがちですが、出てきた内容をアドバイザーが確認して「この質問はこの求職者には難しいから外す」「ここは担当者が口頭で補足する」という判断を加えてから使うことが、質を保つポイントです。
2.4. 内定お祝いと今後のフォロー文
内定承諾後のフォローは、担当者との信頼関係が最も深まるタイミングです。同時に、「次の紹介」「別の候補者の紹介経路」につながる長期的な接点でもあります。ここで丁寧な一言を送れるかどうかは、担当者の関係構築力に直結します。
内定のお祝い文は「書く内容はわかっている、でも言葉が出てこない」というタイプの文章です。求職者のこれまでの経緯・転職理由・入社先の特徴を渡すと、その人だけに向けたお祝い文の下書きが出てきます。
3. RAが使う2種の文書
3.1. 候補者推薦状(企業への紹介文)
RAが候補者を企業に推薦するときに送る推薦状は、「この人を面接したい」と企業担当者に思わせる文書です。候補者の職歴を並べるだけでなく、「なぜこの求人にフィットするか」という判断の言語化が求められます。
Claude Code に候補者の情報・求人の要件・RAとしての推薦理由の骨格を渡すと、推薦状の下書きが出てきます。
指示の例:
以下の候補者を、以下の求人に推薦する推薦状を作成してください。
候補者情報:
- 35歳・男性
- 現職: 中堅SIerのプロジェクトマネージャー(在職8年)
- 実績: 10名規模のチームを率いて基幹システムの刷新案件を3件完遂
- 強み: 要件定義から本番稼働まで全フェーズの経験。顧客折衝が得意
- 転職理由: より自社プロダクトに近い環境で開発に携わりたい
- 年収希望: 700〜800万円
求人情報:
- IT系スタートアップ(クラウドSaaS・80名規模)
- ポジション: プロダクトマネージャー
- 求める人材: PM経験5年以上・顧客折衝経験・スタートアップへの適応力
RA側のコメント(推薦の根拠):
- SIer出身だが基幹刷新案件でサービス設計に深く関わってきた
- 「受託からプロダクトへ」という志向が強く、入社後の定着リスクが低い
推薦状の条件:
- 企業担当者が読んで面接をしてみたいと思える内容
- 300〜400字程度
3.2. 企業へのポジション提案書
RAが企業に新しいポジションの採用提案をするとき、「こういう人材を採用するとこんな効果があります」という提案書を持参・送付するケースがあります。ゼロから書くと時間がかかりますが、骨格を Claude Code に作らせることで、企業の状況と提案内容の組み合わせを短時間で用意できます。
指示の例:
以下の企業に向けたポジション提案書の文章を作成してください。
企業情報:
- 食品メーカー(従業員200名・B2B中心)
- 現在の採用課題: EC販売チャンネルを強化したいが、社内にデジタルマーケの知見がない
提案したいポジション:
- Eコマースマネージャー(新設)
- 業務内容: 自社ECサイトの運用・広告運用・データ分析
- 採用ターゲット: 食品・FMCG業界のEC経験者
提案書に含めてほしい内容:
1. このポジションを設ける背景と目的
2. このポジションが担う業務の具体的な内容
3. 想定される効果(EC売上の自走化・社内知見の蓄積)
4. 採用ターゲットの定義と採用市場の概観(一般的な傾向として記述)
文量: A4 1枚程度
4. 個人情報をClaude Code に渡すときの注意事項
人材紹介業では、Claude Code に渡す情報に個人情報が含まれます。氏名・現職・年収・転職理由——これらはすべて個人情報保護法上の個人情報です。入力する前に、社内のコンプライアンス担当者や法務と相談のうえ、以下の点を確認してください。
渡し方の工夫
実務上、候補者番号や仮名を使って入力し、完成後に実名・具体的な情報に差し替える運用が現実的です。「求職者Aさん(28歳・女性・接客販売6年)」のように属性情報とスキル情報を渡し、固有の個人情報(フルネーム・連絡先・具体的な勤務先)は入力しない、という判断も一つの方法です。
社内ルールの明文化
担当者によって「何を入力してよいか」の判断がバラバラになると、情報漏洩リスクへの対応が不安定になります。Claude Code への入力ルールを社内ポリシーとして先に定め、チーム全員に周知してから導入することが安全な進め方です。
確認は省略しない
Claude Code が生成した推薦状や面接対策資料に、候補者の経歴・実績・転職理由が正確に反映されているかを確認する工程は省略できません。事実と異なる内容が含まれたまま企業に送ることは、候補者への信頼を損なうことになります。
5. 「言葉が枯れていく」問題と向き合う
担当件数が増えると、同じような求職者に同じような言葉を繰り返すことになります。「前職が営業で、次も営業を希望している30代の方」への面接対策資料が、どれも似たような内容になっていく。フォローメールが定型文に近くなっていく。これは担当者の怠慢ではなく、構造的な問題です。
Claude Code を使うことで、この問題の一部を解消できます。都度情報を渡してゼロから生成させることで、「前に書いたのと同じような文章になってしまう」という惰性を避けやすくなります。
ただし、Claude Code が生成する文章は、担当者が渡した情報の範囲でしか動きません。「この求職者の面談でどんな表情をしていたか」「転職動機を話すときの言葉の重み」「家族の話をしながら少し目を細めた」——こういったことは、担当者にしかわかりません。
Claude Code が作る文章に、担当者が知っている「この人らしさ」を一文加える。その一文が、求職者にとって「自分のことを見てくれているアドバイザー」という印象を作ります。生成した文章を素材として使い、最後の一文を担当者が加える習慣をつけることが、質を落とさずにスピードを上げるための正しい使い方です。
6. claudecode道場で学ぶと何が変わるか
claudecode道場は、非エンジニアの経営者・担当者が Claude Code を業務で使えるようになるための研修プラットフォームです。malna株式会社が運営しています。プログラミングの知識は一切不要で、全19章(2026年4月時点)を無料で学ぶことができます。
人材紹介業の担当者にとって、Claude Code を使えるかどうかは「どれだけ担当件数を増やせるか」ではなく「担当している一人ひとりに、どれだけ質の高い関与ができるか」という問いへの答えに関わります。
面談の質・紹介の精度・企業へのプレゼンテーションの説得力——これらを支える文書の質を上げながら、その作成時間を減らす。それが、人材紹介業でClaude Code を使う本来の目的です。
「まずどこから始めればいいかわからない」という場合は、今日これから送る求職者フォローのメール1通を Claude Code で試作することから始めることをお勧めしています。
7. まとめ
1人のアドバイザーが30〜50名を担当する現場で、全員に個別の言葉を届けることは、時間の制約を考えると難しいのが現実です。Claude Code を使うことで、情報を渡せば文章の骨格が出てくる工程を短縮し、担当者が「何を伝えるか」の判断と「担当者にしか書けない一文」の加筆に集中できる環境が作れます。
重要なのは、生成した文章をそのまま送らないことです。事実確認・担当者固有の一言の追加・個人情報の取り扱いルールの遵守——これらを前提として、Claude Code を「文章の素材を作るツール」として使うことが、マッチングの質を落とさずにスピードを上げる方法です。
malnaでは、人材紹介会社での Claude Code 導入支援を行っています。「チーム全体で使えるようにしたい」「自社の業務に合った使い方を一緒に考えたい」という場合は、お気軽にご相談ください。
※本記事に含まれる時間削減の数値は、特定の業務条件を前提とした参考値です。実際の効果は業務内容・環境・習熟度によって異なります。
