IT部門の非エンジニア担当者が Claude Code を使ったら、システム移行案内・操作マニュアル・ベンダー選定資料が半日から45分になった
「エンジニアに依頼するほどではないが、自分でやるには時間がかかる」
この感覚に毎週のように直面しているのが、IT部門で社内展開を担う非エンジニアの担当者です。
プログラミングはしない。サーバーの設計もしない。でも、新しいツールを全社に展開するときの案内メールを書く。システムが切り替わるときに全員向けのFAQを用意する。ベンダーから届いた提案書を受け取って、選定資料にまとめる——。
こういった仕事は、技術的な理解が必要なのに、「技術者の仕事」として認識されないことが多いです。エンジニアに「この案内メールの文章を書いてほしい」とは頼みにくい。でも自分で書こうとすると、技術的な正確さと平易な説明のバランスを取るのに半日かかってしまう。
この「業務の狭間」に入り込んでいる非エンジニアのIT担当者が、Claude Code を活用することで何が変わるか。この記事ではその具体像を説明します。
1. 「Claude Code はコードを書くツール」という思い込みを外す
Claude Code の名前に「Code」が入っているため、「プログラマーが使うツール」という印象を持っている方は少なくありません。実際、Claude Code はコードを書く用途でも使われますが、それは一側面にすぎません。
Claude Code が本質的に得意なのは「情報を整理して、目的に合った文章を作る」ことです。
IT部門の非エンジニア担当者の仕事のかなりの部分は、「技術的な内容を非技術者に伝わる言葉で書く」という作業です。この作業こそが、Claude Code の最も力を発揮できる領域のひとつです。
「コードを書くツールだと思っていたが、文書作成に使えるとは知らなかった」という認識転換が、IT部門の非エンジニア担当者にとって最初の一歩になります。
2. 具体的に使える4種の文書
IT部門の非エンジニア担当者がよく抱える文書作成の負担を、具体的な4種に絞って説明します。
2.1. システム移行案内メール
社内システムが切り替わるとき、全社員に向けた案内メールを書くのはIT部門の担当者の仕事です。「いつ・何が変わるか・何をしなければならないか・困ったときはどこに聞くか」を伝えるシンプルな構成のようでいて、実際には難しい点が多くあります。
技術的に正確に書こうとすると、専門用語ばかりになって現場の社員には伝わらない。かみ砕いて書こうとすると、IT担当者からすると「不正確」と感じる表現になる。このバランスを取るために何度も書き直していると、半日があっという間に過ぎます。
Claude Code への指示例:
以下の内容をもとに、全社員に送るシステム移行案内メールを作成してください。
受け手: 社内の全社員(エンジニア以外が多数、ITリテラシーは平均的)
トーン: 丁寧だが圧迫感がない。変更に対する不安を和らげる雰囲気
移行内容:
- 現行の経費精算システム(旧システム)から SmartHR の経費精算機能に移行
- 移行日: 5月1日(木)
- 旧システムは4月30日(水)17時に閲覧のみに変更、入力不可になる
- 移行後は SmartHR アプリのインストールが必要(案内はIT部門から別途送付)
- 操作方法の説明会: 4月22日(火)12:00〜12:45、Zoom(後日録画共有あり)
- 困ったときの窓口: IT部門 担当〇〇(内線:XXX)
含めてほしい内容:
- 件名
- 移行の概要と理由(1〜2文)
- 社員が対応すること(箇条書き)
- 説明会の案内
- 問い合わせ先
出てくる下書きを確認・修正して使う流れです。「書き始めるまでの停滞時間」がなくなるだけで、作業全体の時間が大幅に変わります。
2.2. ツール操作マニュアル
新しいツールを全社に展開するとき、操作マニュアルを用意する作業はIT部門に集中しがちです。ツールによっては公式マニュアルが英語だったり、自社の運用方法と合っていなかったりするため、カスタマイズしたマニュアルの作成が必要になります。
Claude Code への使い方として効果的なのは、「公式ドキュメントや自分が把握している手順を箇条書きにして渡し、社内向けに読みやすい形に整えてもらう」という方法です。
指示例:
以下の手順をもとに、総務部スタッフ向けの操作マニュアルを作成してください。
対象ツール: Slack(新規導入)
読者: PC操作は標準的にできるが、チャットツールはこれまで使ったことがない社員
作成する手順:
1. Slackへのログイン方法(招待メールから初期設定)
2. チャンネルへの参加方法
3. メッセージの送り方(テキスト・ファイル添付)
4. 返信・スレッドの使い方
5. ダイレクトメッセージの送り方
フォーマット: 手順ごとに見出しを付け、各手順を3〜5ステップに分けて番号付き箇条書きで
画像・スクリーンショットはマニュアル担当者が別途用意する必要がありますが、「何をどの順序で説明するか」という骨格が出来上がるだけで、マニュアル作成の時間が大幅に変わります。
2.3. ITサポートFAQ
社員からIT部門に寄せられる問い合わせには、ある程度パターンがあります。「パスワードを忘れた」「ファイルが保存できない」「会議ツールの音が出ない」——同じ質問が何度も来ることに気づいている担当者は多いはずです。
FAQを整備することで問い合わせを減らせるとわかっていても、「書く時間が取れない」というのが現実です。Claude Code に「よく来る問い合わせ」を箇条書きで渡して「FAQ形式でまとめてください」と依頼するだけで、整理された下書きが出てきます。
指示例:
以下のよく来る問い合わせをもとに、社員向けのFAQページの文章を作成してください。
トーン: IT知識がなくても読んで自己解決できるような平易な言葉
フォーマット: Q&A形式(Q:とA:で区切る)
よく来る問い合わせ:
- 会社のWi-Fiに接続できない(自分のスマホを持ち込んだ場合)
- Zoom会議で音が出ない・相手に音声が届かない
- Outlook でメール送信後に「配信失敗」のメッセージが来る
- パスワードを忘れて社内システムにログインできない
- 社外から社内システムにアクセスするにはどうすればよいか(VPN未設定の状態)
FAQの内容は実際の環境・設定に合わせた確認が必要ですが、「文章の骨格を作る」という意味では大幅な時間短縮になります。
2.4. ベンダー選定資料
新しいシステム・サービスのベンダーを選定する際、複数社からの提案を比較する資料の作成もIT部門の担当者が行うことが多い仕事です。各社の提案書から情報を抜き出して比較表を作り、評価基準を整理し、上司への説明用のまとめを作る——これを手作業でやると数時間かかります。
Claude Code への使い方は、「各社の提案書から自分がメモした情報を渡して、比較表と評価サマリーを作ってもらう」というものです。
3. 情報システム部門が「わかりにくい」と言われる問題
IT部門が社内から「案内がわかりにくい」「説明が難しすぎる」と思われるケースは少なくありません。これは担当者の能力の問題ではなく、「技術的な正確さ」と「非技術者への伝わりやすさ」の両立が構造的に難しいからです。
技術的な正確さを優先すると、「デフォルトゲートウェイの設定を変更してください」という表現になる。非技術者への伝わりやすさを優先すると「インターネットの設定を変えてください」というような曖昧な表現になる。
Claude Code を使うことで、この両立が現実的になります。技術的に正確な情報を入力として与え、「IT知識がない社員にわかる言葉で説明してください」と指示するだけで、両方の要件をある程度満たす文章が出てきます。
IT部門が社内での信頼を高めるうえで、「案内がわかりやすい」「マニュアルを見れば自己解決できる」という評価は重要です。文章の改善が、IT部門の社内での位置づけを変えることにつながります。
4. セキュリティポリシーの平易な説明文——具体例
社内のセキュリティポリシーは、「守ってほしいが、技術的すぎて意味がわからない」と思われがちな文書の代表格です。
「パスワードは8文字以上で英字・数字・記号を含めること」という要件は技術的には正確ですが、「なぜ必要か」「どういう場面で問題が起きるか」が伝わらないと、守られません。
Claude Code への指示例:
以下のセキュリティポリシーの条文について、
全社員向けに「なぜこのルールが必要か」を平易に説明する文章を作成してください。
技術用語を避け、具体的なシナリオで説明してください。
【条文】
「社外から社内システムにアクセスする際は、必ず会社支給のVPNを使用すること。
個人のWi-Fi・公衆Wi-Fiからの直接アクセスは禁止する」
含めてほしい要素:
- このルールに違反したときどんなリスクがあるか(具体的なシナリオで)
- 正しい手順
- 「うっかり違反」が起きやすいタイミングへの注意喚起
出てくる文章は技術的な詳細よりも「なぜ必要か」「何が危険か」を中心にした説明になります。ポリシー文書に添付したり、社内研修の資料に使ったりすることで、セキュリティルールの浸透を助けます。
5. 導入時の注意点
社内情報・機密情報の入力に注意する
システムの詳細仕様・未公開のシステム構成・個人の業務情報を Claude Code に入力する際は、自社のセキュリティポリシーと Claude Code の利用規約を事前に確認してください。「システムの概要と目的」のレベルであれば多くの場合問題ありませんが、詳細な設定情報・IDパスワードを含む情報の入力には慎重な判断が必要です。
出力の技術的な正確性は担当者が確認する
Claude Code は一般的な知識をもとに文章を作りますが、自社の特定の環境・システム・運用ルールを知りません。出力された手順書・案内文に記載された内容が、自社の実際の環境と合っているかを必ず確認してから使用してください。
「読んでもらえる文章」かどうかを最後に確認する
Claude Code が作る文章は正確で構造的ですが、「読んでいて温かみがない」と感じることがあります。社員に向けた案内文は、最後に自分の目で読んで「この文章は読んでもらえるか」「プレッシャーを与えすぎていないか」を確認することをお勧めしています。IT部門の文章は機能的になりがちですが、受け手への配慮があるかどうかで、読まれるかどうかが変わります。
6. こんな人に特に向いています
- 新しいシステム・ツールの社内展開を担当しており、全社員への案内文作成に時間がかかっている
- ヘルプデスク対応が多く、FAQを整備したいが着手できていない
- ベンダー選定の比較資料を作るたびに数時間かかっていると感じている
- 社内からIT部門の案内が「わかりにくい」と言われることがあり、改善したいと思っている
- エンジニアと現場をつなぐ役割を担っているが、文章作成のスキルに自信がない
- IT以外の業務との兼務で、書類作成にかける時間を削減したい
向いていない用途について
システムの設計書・API仕様書・インフラ構成図などの技術的な精密さが求められる文書は、エンジニアが直接作成する必要があります。Claude Code の出力はドラフトであり、社員全員に影響するシステム移行の案内など重要な文書は、必ず関係者の確認を経てから発信してください。
7. claudecode道場で学ぶと何が変わるか
claudecode道場は、非エンジニアの経営者・担当者が Claude Code を業務で使えるようになるための研修プラットフォームです。malna株式会社が運営しています。プログラミングの知識は一切不要で、全19章(2026年4月時点)を無料で学ぶことができます。
IT部門の非エンジニア担当者向けには、「技術的な内容を非技術者に伝わる文書を作る」という観点で Claude Code を使いこなすためのカリキュラムが用意されています。「Claude Code はエンジニアが使うもの」という思い込みを外した先に、今の業務を大きく変える可能性があります。
8. まとめ
IT部門の非エンジニア担当者が毎日直面する「エンジニアに頼むほどでもないが、自分でやると時間がかかる」という作業の多くは、Claude Code で大幅に短縮できます。システム移行案内・操作マニュアル・ITサポートFAQ・ベンダー選定資料の4種は、その代表的な対象です。
技術的な内容を非技術者に伝わる言葉で書く作業の質と速度を上げることは、IT部門が社内で「わかりやすい」と評価される第一歩でもあります。
malnaでは、IT企業・情報システム部門を対象にした Claude Code 導入支援を行っています。「自社の業務に合った使い方を一緒に整理したい」という方は、お気軽にご相談ください。
※本記事に含まれる時間削減の数値は、特定の業務条件を前提とした参考値です。実際の効果は業務内容・環境・習熟度によって異なります。
