学習塾で Claude Code を使ったら、保護者向け月次通信の作成が半日から1時間になった
月次の保護者向けニュースレターは、先生全員が最も後回しにする業務だった。
これは、ある中規模の学習塾で塾長を務める方が話してくれたことだ。毎月末に「来月の学習目標・今月の振り返り・塾からのお知らせ」をまとめた通信を保護者に配布する慣習があったが、締め切り前日になっても誰も手をつけていない——というのが毎月繰り返されていた。
「先生たちが怠けているわけではない。授業の準備も面談も採点もある中で、ニュースレターを書く時間を捻出するのが、単純に難しいのです」とその塾長は言っていた。
結局、毎月の通信は塾長か教室長が一人で書き上げることになり、その人間が深夜に残業する——というパターンが定着していた。
この問題は、学習塾・予備校に特有の構造的な課題でもある。塾の先生は「教えること」のプロであり、文章を書くことへのトレーニングは受けていない。保護者への説明文・案内文・フィードバック文は、実は「専門的な文章術」が求められる仕事だ。それを、授業以外のすべての業務と並行してこなすことが求められている。
1. 塾長・教室長と、授業担当講師——それぞれの文章課題
学習塾の文章仕事は、担当する役割によって性質が異なる。
塾長・教室長の文章課題
塾長・教室長が向き合う文章の多くは「塾全体の発信」だ。
保護者向けの月次通信・年度末の成果報告・入試結果のお知らせ・夏期講習や冬期講習の案内。新規問い合わせへの返信・体験授業の案内。口コミ・評判を意識した塾の紹介文。これらはすべて、「塾の顔として書く文章」であり、一定の品質と速度の両方が求められる。
特に夏期・冬期講習の案内文は、毎年繰り返し発生しながら「毎回似た内容を書かなければならない」という側面がある。昨年の文章をそのまま再利用するわけにもいかず、かといってゼロから考えると時間がかかる——という構造が「後回しにされる理由」になっている。
授業担当講師の文章課題
講師が向き合う文章は「個々の生徒・保護者への発信」だ。
個別面談後の面談記録・フォローメール、月次の生徒別学習コメント、テスト結果に添える一言、保護者からの質問への返答——これらは、生徒・保護者との信頼関係を維持するために欠かせないが、30名の担当生徒がいれば30件分を書く必要がある。
「授業準備に時間を使いたいのに、文章を書く時間がかかりすぎる」という講師の声は、多くの塾で聞かれる。
2. 4つの文章タスクと個人情報の扱い方
2.1 保護者向け月次通信
月次通信の典型的な構成は「今月の振り返り」「来月の学習目標」「塾からのお知らせ・イベント案内」の3部構成だ。
Claude Code への入力として渡すのは、この月に起きた出来事の概要(模試の結果傾向・重要なイベント・講師からの共有事項)と、来月に向けた注目事項の箇条書きだ。「全生徒の保護者に配布する月次通信の原稿を書いてください」という指示とともに渡せば、通信として読める文章の骨格が出てくる。
塾ごとの言葉遣い・雰囲気(フランクな塾なのか、丁寧な文体を大切にする塾なのか)を指示に加えると、そのカラーに沿った文章になる。
半日程度かかっていた月次通信の作成が、入力と確認・修正を合わせて1時間前後で完了するケースがある。
※ 実際の所要時間は内容の量や修正の程度によって異なります。
2.2 個別面談記録・フォローメール
面談後に保護者に送るフォローメールは「面談の内容を整理して、今後の方針を明確に伝える」ことが求められる文書だ。面談中はメモを取ることに集中しがちで、後から文章に直す作業に時間がかかりやすい。
Claude Code に面談メモ(生徒の現状・課題・保護者の要望・今後の方針の合意事項)を渡して「保護者向けの面談フォローメールを書いてください」と指示すれば、面談の内容を整理した文章が出力される。
個人情報の扱いについて
ここで重要なのが、生徒の個人情報の取り扱いだ。Claude Code にテキストを入力する場合、氏名・連絡先など識別情報は入力しないことを強くお勧めする。「中学2年生・男子・在籍8ヶ月目」「英語は単語は覚えているが文法が弱い」という属性情報と学習状況だけで入力しても、十分な面談記録・フォローメールが出力される。
固有名詞が必要な箇所(「○○さんへ」という書き出し)は、出力された文章を確認してから手作業で差し替える運用が現実的だ。
2.3 夏期・冬期講習の案内文
夏期講習・冬期講習の案内文は、毎年発生しながら「今年はどう書こう」と迷う仕事の代表格だ。
Claude Code への入力として、今年の講習の概要(日程・科目・特徴・今年の強調ポイント)を渡して「保護者向けの夏期講習案内文を書いてください」と指示すれば、案内として読める文章が出てくる。入試を控えた3年生向けと、基礎固めが目的の1・2年生向けでは、訴求するポイントが違うため、ターゲット別に2種類作るという使い方もできる。
入試シーズンと講習シーズンの活用の違い
入試直前期(1〜2月)に発生する文章仕事と、講習シーズン(6月以降)の文章仕事は、性質が異なる。
入試直前期に必要な文章は「激励・安心させる」「直前に気をつけること」という、感情面に配慮した言葉が求められる。受験生の保護者への「最後の一押し」になる言葉は、形式的な案内文とは別の温度感が必要だ。Claude Code への指示に「受験直前の緊張している3年生の保護者に向けて、励ます内容で」という文脈を入れることで、そのトーンに合わせた文章が出てくる。
一方、講習シーズンの案内文は「参加してほしい・申し込んでほしい」という明確な目的がある。講習の特徴・定員・締め切りといった情報を漏れなく伝えながら、参加意欲を高める文章が求められる。
2.4 合格体験文(匿名事例)
塾のウェブサイトや資料に掲載する「合格体験文」は、塾を選ぶ保護者・生徒にとって重要な判断材料になる。しかし、実際の生徒の体験をまとめる作業は手間がかかる。
匿名で掲載する場合、「この生徒の状況・取り組んだこと・結果」という事実だけを渡して「合格体験文の形式に整理してください」と指示すれば、掲載できる水準の文章が出力される。個人が特定される情報は含めず、学習の過程と結果に絞った内容にすることで、個人情報の観点でも問題の少ない形で活用できる。
3. 保護者の不安に応える言葉選びをどう実現するか
学習塾の文章で特に難しいのが「保護者の不安に応える言葉選び」だ。
成績が伸び悩んでいる生徒の保護者へのフォローメールは、事実を正直に伝えながら、保護者が「この塾に任せておいて大丈夫だ」と感じられる言葉が求められる。「課題を伝えすぎると不安を煽る、伝えなさすぎると信頼を失う」という難しいバランスがある。
Claude Code への指示で「課題は率直に伝えながら、前向きな改善方針とともに伝える文章で」という方向性を入れると、そのバランスを意識した文章が出てくる。「成績が伸びていない」という事実を「○○の部分でつまずきがある、これを克服することが次のステップ」という建設的な言葉に変換する作業を代わりに行ってくれる。
「厳しいことを伝えたい」という場面でも、「このままでは志望校に間に合わない可能性があることを、率直だが丁寧に伝える文章で」という指示を入れれば、それに合わせた文章が出てくる。
4. 実際の入力と出力のイメージ
月次通信の場合
Claude Code への入力例:
以下の情報をもとに、塾から保護者への月次通信(4月号)の原稿を書いてください。
【4月に起きた主な出来事】
- 新学期スタート。新規入塾生8名が加わった
- 4月14日に春の確認テストを実施。全体的に数学の文章題・英語のリスニングが
得点を下げる傾向が見られた
- 5月3〜5日に連休特別授業(補講)を実施予定
【来月(5月)の注目ポイント】
- 中間テストが5月20日前後(学校による)に集中する
- テスト直前の追い込み学習の重要性を伝えたい
- 中3生は夏期講習の早期申込の案内を5月末に行う予定
【塾のカラー】
- 全学年通して丁寧な言葉遣いを大切にしている
- 保護者との信頼関係を重視している
A4一枚程度(600〜700字)で、保護者が読んで安心・信頼できる文章にしてください。
こうした入力から、確認テストの傾向に触れながら来月の中間テストに向けた学習姿勢の呼びかけと、塾からのお知らせをまとめた通信原稿の下書きが出力される。
面談後のフォローメール
Claude Code への入力例:
以下の面談内容をもとに、保護者に送る面談後フォローメールを書いてください。
【生徒情報(属性のみ)】
- 中学3年生・女子
- 第一志望: 公立高校(偏差値60前後)
【面談で共有した内容】
- 数学は図形分野が弱点。方程式・関数は問題なし
- 英語のリスニングが課題。単語・文法は標準的
- 自主学習の習慣はある。ただし苦手科目を避けがちな傾向
- 夏期講習での集中補強を提案し、保護者から了承をもらった
【フォローメールの目的】
- 面談の確認・感謝
- 今後の方針の再確認(書面として残す)
- 夏期講習への参加意向の再確認
丁寧な敬語で、400字程度で作成してください。
5. 講師が本来すべき授業準備に時間を戻す
この記事で一貫して伝えたいのは、「文章仕事を減らして、授業準備の時間を増やす」というゴールだ。
塾の先生の価値は、授業の質にある。問題の解き方をわかりやすく教える力、生徒の詰まりポイントを素早く見抜く力、その生徒に合わせて言葉を変える力——これらは文章仕事では代替できないスキルだ。
一方、月次通信・面談記録・講習案内といった文章仕事は、「何を伝えるか」という中身は先生が持っているが、「どう文章にするか」という部分は道具に任せることができる。Claude Code はその「どう文章にするか」を代わりに行う道具だ。
月次通信に半日かかっていた先生が、1時間で終わるようになった分の時間を、翌月の授業計画や教材研究に使えるようになる。その積み重ねが、授業の質に返ってくる。
6. claudecode道場で体系的に学ぶ
claudecode道場は、非エンジニアの経営者・担当者が Claude Code を業務で使えるようになるための研修プラットフォームだ。malna株式会社が運営しており、プログラミングの知識は一切不要。2026年4月時点で全19章が公開されており、無料で学べる。
学習塾・予備校では、「保護者との信頼を文章で作る」という業務の重要性が高い。claudecode道場では、保護者向け文書・生徒へのフィードバック文など、人への配慮が求められる文章の指示設計を体系的に学べる。
「AIが書いた感が出てしまわないか」という不安を持つ方も多いが、指示の工夫によって塾のカラー・先生の個性を反映させる方法も、カリキュラムの中で扱っている。
7. まとめ
月次通信・個別面談記録・講習案内・合格体験文——これらはいずれも「大切だとわかっているが時間がない」文章仕事の代表格だ。後回しになった結果、最終的に一人が深夜に書き上げるという構造が多くの塾で繰り返されている。
Claude Code を使えば、面談メモや伝えたい事実を渡すだけで文章の骨格が出てくる。確認・修正の時間だけで完成させられるため、「書く時間がない」から「確認する時間に変える」という変化が起きる。
malnaでは、学習塾・予備校をはじめとする企業の Claude Code 導入支援を行っている。「どこから始めればいいかわからない」「講師全員に使ってもらいたい」という場合は、まずはご相談いただきたい。
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※本記事に含まれる時間削減の数値は、特定の業務条件を前提とした参考値です。実際の効果は業務内容・環境・習熟度によって異なります。
