ホテルで Claude Code を使ったら、OTA口コミ返信50件が1日がかりから2時間になった
GWが明けた翌週の月曜朝、フロントデスクに出勤したスタッフが最初にすることは、まずOTAの管理画面を開くことだ。
Booking.com、じゃらんnet、楽天トラベル——3つのプラットフォームをそれぞれ開くと、先週末のチェックアウトが集中した期間に積み上がった口コミが待っている。満室だった週末の翌朝、返信待ちが50件を超えることは珍しくない。
問題は、口コミへの返信がフロントスタッフの「本来業務の合間」にしか手が回らない点だ。チェックインの対応、電話への対応、清掃チームとの連携——これらをこなしながら50件の返信を書こうとすると、どんなに早くても1日以上かかる。気づけば1週間返信できないまま、という状況も起きやすい。
OTA(Online Travel Agent)のプラットフォームでは、口コミへのオーナー返信の有無と速度が評価スコアに影響することがある。返信のタイミングが遅れることで生まれる機会損失は、客室稼働率を左右するレベルになることもある業界だ。
この問題を、Claude Code を使ってどう変えるかを説明したい。
1. フロントスタッフと、営業・企画部門——それぞれの文章課題
ホテル・旅館の文章仕事は、フロントを担う人間と、営業や企画を担う人間とでは性質がまったく違う。
フロントスタッフが向き合う文章課題
フロントスタッフの文章仕事の中心は「対お客様の即時対応」だ。
OTAの口コミへの返信。予約確認メールへの返事。到着前に送る案内メール。チェックアウト後に送るお礼メッセージ。問い合わせフォームへの回答——これらはどれも「すぐに書いて、すぐに送る」ことが求められる。しかし、フロント業務と並行してこなすには量が多すぎる。
特に口コミ返信は「全件に返信する」という方針を持つホテルほど、担当者の負担が重くなる構造がある。1件1件を丁寧に書こうとするほど時間がかかり、件数が溜まるとさらに書く気力が下がる——という悪循環に陥りやすい。
営業・企画部門が向き合う文章課題
営業や企画担当が向き合う文章は「集客のための文書」だ。
季節プランの紹介文、メディア向けプレスリリース、旅行代理店向けの提案資料、法人向けの宴会・会議プランの案内、ウェブサイトの客室説明文——これらは「書かなければ集客に影響する」とわかっていながら、優先度が下がりがちな仕事の代表格だ。
特にプレスリリースは「専門のライターに頼まないと書けない」と感じている担当者が多いが、必要な情報を整理して渡せば形になる文章でもある。問題は「整理する時間をどこで作るか」という点だ。
2. OTAの口コミ返信——評価スコアが収益に直結する業界特性
ホテル・旅館の集客では、OTAの評価スコアが一定の役割を果たしている。Booking.comの「スーペリア」認定、じゃらんnetの口コミ評点——これらが検索表示の順位やバナー掲載に影響するプラットフォームもある。口コミへのオーナー返信を継続することは、サービス品質の継続的な改善とともに、プラットフォーム上での存在感を維持することにもつながっている。
Claude Code を使う場合、口コミの内容と返信の方向性を入力として渡すことで、返信文の下書きが出てくる。
ポジティブな口コミへの返信では、お客様が評価してくれた具体的な点に触れながら感謝を伝えることが基本になる。「お部屋からの眺めがよかった」という口コミに対して「眺めをお楽しみいただけて嬉しいです」という返信は当然だが、ここに「次回はどのシーズンにも違う景色が楽しめる」という一言を加えるだけで、再訪を促す内容になる。Claude Code にこの方向性を指示として入れると、そのトーンで書いてくれる。
ネガティブな口コミへの返信は難しい。
返信文の方向性を誤ると、マイナスな印象をさらに強めることがある。「お客様のご不満はすべてもっともです」という全面謝罪は、口コミを読む他のお客様に「問題が多い施設」という印象を与えることがある。逆に「事実と異なります」という反論調の返信は「言い訳をする施設」と受け取られることもある。
適切な返信のバランスは「事実は認める・改善を伝える・過剰な謝罪はしない」という構造になることが多い。Claude Code への指示に「サービスへの感謝を伝えつつ、指摘の事実を受け止め、改善に向けた取り組みを簡潔に伝える返信で」という方向性を入れると、そのバランスを意識した文章が出てくる。
ただし、絶対に注意してほしいことがある。
衛生面・食中毒・アレルギー反応を示唆するクレームが口コミに含まれている場合、Claude Code で返信文を生成する前に、事実確認と保健所への報告要否を確認する必要がある。このカテゴリのクレームは「文章の問題」ではなく「対応手順の問題」だ。適切な文章を書くことよりも、まず正しく事態を把握して内部で対応する方が先決になる。
3. 実際の入力と出力のイメージ
OTA口コミ返信の場合
Claude Code への入力例:
以下の口コミに対するオーナー返信を書いてください。
【口コミの内容(要約)】
- 部屋からの富士山の眺めが素晴らしかった
- スタッフの対応が丁寧で感謝している
- 温泉の混雑が気になった(特に夜の9〜10時帯)
- また来たいが、次は混雑を避けて来たい
【返信の方向性】
- 眺めを楽しんでもらえたことへの感謝
- 混雑についての事実を受け止め、時間帯のおすすめを伝える
- 再来訪への期待を自然な形で
【トーン】
- 過剰な謝罪をせず、誠実さと温かみのある文体で
- 100〜130字程度
プラットフォーム: じゃらんnet
このような入力から、混雑への謝罪と時間帯のおすすめを添えながら、再来訪への期待を伝える返信文の下書きが出てくる。
50件分を一度に処理しようとするとかえって管理しにくくなるため、「今日中に返信するもの10件」を選んでまとめて入力するという分割した使い方が現実的だ。
季節プランの案内文の場合
Claude Code への入力例:
以下の情報をもとに、旅行予約サイト(じゃらんnet)に掲載する
紅葉シーズンのプラン紹介文を作成してください。
【プランの概要】
- 名称: 秋の奥日光・紅葉露天風呂プラン
- 対象期間: 10月中旬〜11月上旬
- 特典: 夕食に松茸土瓶蒸し追加、チェックアウト11時(通常10時)
- 客室: 露天風呂付き和室(定員2名)
【このプランを選ぶお客様のイメージ】
- 40〜50代のご夫婦・カップル
- 秋の景色の中でゆっくり温泉に入りたい
- 松茸など季節食材を楽しみたい
- 都市部からの週末旅行
【強調したいポイント】
- 露天風呂から紅葉が見える
- 松茸は地元の仕入れルートを持っている
- ゆったりとした時間の流れを体験できる
200〜250字程度で。
こうした入力から、紅葉の露天風呂と松茸料理の季節感を組み合わせた、旅行予約サイトに掲載できる水準の案内文の下書きが出てくる。
4. 繰り返し使えるテンプレートの育て方
ホテル・旅館の文章仕事で Claude Code を使い続けていくと、「同じシーズンに毎年似た文章が必要になる」という特性が見えてくる。
夏の花火大会シーズン、紅葉シーズン、年末年始、GW——これらの季節プランは毎年繰り返し発生する。昨年の文章をそのまま使うわけにもいかず、かといってゼロから書くと手間がかかる。
ここで有効なのが、「良かった入力指示をそのまま保存しておく」という運用だ。
「毎年使える紅葉プランの入力フォーマット」として、変動しない部分(プランの目的・ターゲット層・強調したい宿の特性)はそのまま残し、変動する部分(今年の特典・期間・強調ポイント)だけを毎年書き換える形にしておく。
こうすると、翌年は「去年のフォーマットに今年の情報を上書きして Claude Code に貼る」だけで、その年らしい案内文の下書きが出てくる。ゼロから考える時間が大幅に減り、「確認と微調整」だけで完成させられるようになる。
口コミ返信でも同じ発想が使える。「ポジティブな口コミへの返信」「夕食への評価に対する返信」「スタッフへの感謝への返信」など、よく来るパターン別に入力指示のひな形を用意しておくと、担当者が交代してもブレなく返信できる。
5. インバウンド対応——英語・中国語への活用可能性と限界
訪日外国人の受け入れを進めているホテルにとって、英語・中国語での文章対応は避けられない課題になっている。
Claude Code は英語・中国語での文章生成にも対応している。日本語の口コミ返信指示を渡して「英語版も作成してください」と指示を加えると、英語の返信文が出てくる。「この中国語の口コミに対する返信を日本語で書いてから、中国語にも翻訳してください」という使い方もできる。
ただし、インバウンド対応での活用には、はっきりした限界がある。
伝統的な旅館の文化的な説明や、日本特有の接客の言葉の機微を外国語で表現する場合、Claude Code が出した文章が現地の文化的な文脈で適切かどうかの確認が必要だ。「おもてなし」という概念をどう英語で表現するか、「畳の部屋での過ごし方」を中国語でどう案内するかは、出力の確認に外国語ができるスタッフの目が必要になる。
「外国語の文章の下書きを出してもらい、英語・中国語が得意なスタッフが確認・修正する」という役割分担が、現実的な使い方になる。Claude Code だけで完結しようとするのは、リスクが残る。
6. プレスリリースと旅行代理店向け資料
営業・企画担当が後回しにしがちな文書の代表格が「プレスリリース」だ。
新しいプランの開始、設備のリニューアル、受賞・認定の発表——これらを「プレスリリース」として書こうとすると、フォーマットの問題・言葉選びの問題・どこに送るかの問題が重なり、着手が遅れることが多い。
Claude Code への入力として、発表したい内容(事実)と伝えたい対象(どのメディアに、誰に読んでほしいか)を渡して「プレスリリースの形式で書いてください」と指示すると、プレスリリースの構成に沿った文章が出てくる。「リード文(要点)→詳細→背景→会社概要」という基本構造が出力されるため、あとは事実の確認と自社固有の情報を補足するだけで完成させられる。
旅行代理店向けの提案資料も同様だ。「このシーズンにこのターゲット層に来てほしい。この施設の特徴はこれだ」という意図を箇条書きで渡せば、代理店のバイヤーに向けた資料の文章骨格が出てくる。
7. claudecode道場で学ぶと何が変わるか
claudecode道場は、非エンジニアの経営者・担当者が Claude Code を業務で使えるようになるための研修プラットフォームだ。malna株式会社が運営しており、プログラミングの知識は一切不要。2026年4月時点で全19章が公開されており、無料で学べる。
ホテル・旅館のような「接客の言葉が品質の一部になる」業種では、「指示の品質が文章の品質を決める」という感覚が特に重要になる。「丁寧に返信してください」だけの指示と、「返信を読んだ他のお客様が安心できるよう、改善姿勢が伝わる構成で」という指示では、出てくる文章が変わる。
claudecode道場では、この「指示の設計」を体系的に学べる。口コミ返信・プラン案内文・インバウンド向け文書——ホテル・旅館の業務に近い文章タスクを例にした指示の作り方を、プログラミングなしで習得できるカリキュラムが揃っている。
8. まとめ
OTA口コミ返信・季節プランの案内文・プレスリリース・インバウンド対応——これらはどれも「書く必要があるのに後回しになりやすい」文章仕事の代表格だ。
GWの繁忙期が明けた翌朝に50件の返信が積み上がっているのは、システムの問題でも担当者の怠慢でもない。「文章を書く時間を業務の中に組み込む構造」が作られていないことが原因だ。
Claude Code を使えば、口コミの内容と返信の方向性を渡すだけで下書きが出てくる。確認と修正の時間だけで完成させられるため、「1件5分かかっていたものを1分で終わらせる」ことができれば、50件で50分以下になる。
malnaでは、ホテル・旅館をはじめとする企業の Claude Code 導入支援を行っている。「どこから始めればいいかわからない」「フロントスタッフにも使ってもらいたい」という場合は、まずはご相談いただきたい。
Claude Code 導入支援について malna に相談する
※本記事に含まれる時間削減の数値は、特定の業務条件を前提とした参考値です。実際の効果は業務内容・環境・習熟度によって異なります。
