総務担当者が Claude Code を使ったら、社内規程と通知文の作成が3日から半日になった
総務部への問い合わせのうち、7割は同じ質問の繰り返しだ——という事実を知っているのは当事者だけだ。
「有給はどこから申請するんですか」「この備品を買いたいんですが」「入社書類ってどれを出せばいいですか」。これらは制度の問題でも、社員のリテラシーの問題でもない。答えが書いてある文書がない、あるいはあっても誰も読まない形になっている、という文書整備の問題だ。
総務担当者が本質的な仕事——社内環境を整え、社員が働きやすい仕組みを作ること——に集中できない最大の理由は、この「書いてなかったから聞かれる」のループにある。
Claude Code はその構造を壊すきっかけになりうる。この記事では、総務業務の特性に合わせた Claude Code の使い方を、「繰り返し業務」と「一回性のイレギュラー業務」に分けて整理します。
1. 総務の業務を2種類に分けて考える
総務の仕事は「毎年繰り返す定型業務」と「突然やってくる一回限りの対応」に大別できます。この2種類で、Claude Code の使い方は異なります。
繰り返し業務(テンプレート化で解決する領域)
- 健康診断のお知らせ
- 年末年始休暇・夏季休暇の案内
- 備品購入申請フローの案内
- 新入社員向けの社内手続き説明
- 外部業者への発注仕様書・依頼文
これらは毎年ほぼ同じ内容が必要になります。一度うまくいった指示文をストックしておけば、翌年は数値や日付を差し替えるだけで済みます。
一回性業務(叩き台生成で解決する領域)
- テレワーク規程の新設
- オフィス移転に伴う全社通知
- 法改正対応での就業規則改定
- 外部委託先との業務仕様書の整備
- 緊急の感染症対策ガイドライン
これらは「どう書けばいいかわからない」から時間がかかります。Claude Code に骨格を出してもらい、そこから修正・専門家確認に入るフローにすることで、着手から完成までの時間が大幅に短縮されます。
2. 総務担当者が Claude Code でできること(4種の文書)
2.1. 社内FAQ・問い合わせ対応文書の整備
「どこに何を聞けばいいか」が整理された社内FAQを一度作ってしまえば、繰り返しの口頭対応が減ります。
既存の規程や社内ルールを箇条書きで貼り付けて「社員向けのFAQドキュメントを作ってください」と依頼すると、「Q. ○○はどうすればいいですか? A. 〜」という形式のドキュメントが出てきます。難解な規程文を噛み砕いて、社員が実際に検索しそうな質問の形で整理してもらえます。
FAQ整備の費用対効果は高い。一度作ってしまえば、その後何度も来るはずだった問い合わせをまとめて防げるからです。
2.2. 備品管理・施設管理に関する規程文書と手順書
「この業務は口頭で覚えた」「前任者から見て学んだ」——総務の業務は属人化しやすい。担当者が変わるたびに引き継ぎに時間がかかり、ミスが起きるのは、文書化されていないことが原因であることがほとんどです。
Claude Code に業務の流れを箇条書きで入力すると、わかりやすい手順書の下書きが出てきます。「会議室の予約・利用ルール」「備品の購入申請フロー」「来客時の対応手順」「新入社員の社員証発行手続き」——これらを一度文書化しておくことで、「誰でも引き継げる状態」を作れます。
手順書を整備するゴールは「自分がいなくても回る」状態です。文書化の手間を Claude Code が下げてくれることで、後回しにしていた整備に着手しやすくなります。
2.3. 行事・休暇・制度変更の全社通知文
「何を・なぜ・いつから・誰が対象か」を箇条書きで入力するだけで、全社向け通知文の下書きが出てきます。
全社向け文書は「誰にでも伝わる言葉」で書く必要があります。また、誤解が生じないよう正確な表現が求められます。「○月○日をもって」「以下の通り定めます」のような定型的な書き方が得意でない方でも、Claude Code を使うことで適切な文体の骨格が出てきます。
特に急を要する通知——感染症対策の変更、オフィス設備のトラブル対応、法改正に伴う手続き変更——は、平時に「どう書くか」を考える余裕がありません。骨格を素早く出してもらい、事実確認と微調整に集中するという使い方が、緊急時に特に効果的です。
2.4. 外部業者向け仕様書・依頼文
清掃業者、セキュリティ会社、設備管理業者——総務には外部業者とのやり取りが多くあります。「この作業をこの条件でお願いしたい」という仕様書や依頼文も、毎回ゼロから書くと手間がかかります。
条件・仕様・担当者・連絡先を箇条書きで入力して「外部業者向けの依頼文書として整形してください」と依頼すると、過不足なく整理された文書が出てきます。
3. 実際の使い方——具体的な入力と出力のイメージ
プログラミングの知識は不要です。テキストを貼り付けて日本語で話しかけるだけで動きます。
ユースケース1: 在宅勤務規程の新設
Claude Code への入力例:
以下の内容をもとに、在宅勤務規程(条文形式)を新設してください。
現在、社内規程として就業規則があります。その第○条に「在宅勤務については別に定める」と
記載されているため、その別規程として作成してください。
【在宅勤務の条件】
・対象: 正社員および契約社員(勤続6ヶ月以上)
・在宅勤務は週2日まで
・申請: 前週金曜日までに所属長に申請・承認を得ること
・就業時間: 通常勤務と同様(9:00〜18:00)
・PC: 会社貸与品のみ使用可。個人PCは原則不可
・交通費: 在宅勤務日は支給しない
・連絡ツール: SlackおよびZoom
・月1回以上の出社義務あり
【出力形式】
第1条から始まる条文形式で。社労士に確認依頼できる「たたき台」レベルで構わない。
出てくるアウトプットのイメージ:
在宅勤務規程(案)
第1条(目的)
本規程は、就業規則第○条に基づき、在宅勤務に関する取扱いを定めることを目的とする。
第2条(定義)
本規程において「在宅勤務」とは、従業員の自宅またはこれに準ずる場所において、
会社の情報通信機器を使用して業務を行うことをいう。
第3条(対象者)
在宅勤務を利用できる者は、正社員および契約社員のうち、勤続6ヶ月以上の者とする。
(以下、各条文が続く...)
ユースケース2: オフィス移転の全社通知文
Claude Code への入力例:
以下の情報をもとに、全社員向けのオフィス移転通知文を作成してください。
・移転日: 2026年6月1日(月)
・新住所: 東京都港区○○1-2-3 ○○ビル5階
・最寄り駅: 地下鉄○○線○○駅 徒歩3分
・引越し作業日: 5月30日(土)・31日(日)(出社不要)
・梱包期限: 5月29日(金)18:00まで。個人の荷物は段ボール5箱まで
・問い合わせ先: 総務部(内線:123)
フォーマルだが読みやすい文体で。件名も含めて作成してください。
操作の流れ
- 制度の要点や通知の内容を箇条書きでまとめる
- Claude Code に「以下の内容をもとに規程を作成してください」と貼り付けて送る
- 出力された文章を確認し、事実との整合性をチェックする
- 規程類は社労士・顧問弁護士に確認し、確認後に社内で使用する
4. よくある疑問と注意点
Q1. 社内規程をAIで作っても法的に問題はありませんか?
Claude Code の出力はあくまでドラフトです。就業規則・社内規程は労働基準法をはじめとする労働関係法令に適合している必要があります。「叩き台を速く作る」ために使うものであり、最終確認は社会保険労務士または顧問弁護士に行ってもらうことが前提です。この役割分担を最初から設計しておいてください。
Q2. 最新の法改正に対応した規程を作れますか?
Claude Code は学習データのカットオフ以降の法改正には対応していない場合があります。「改正の概要を自分で把握した上で、その内容を入力として渡す」という使い方が適切です。「法改正の内容を調べてもらう」用途より「改正内容をもとに条文の骨格を作ってもらう」用途に向いています。
Q3. 個人情報を含む内容を入力していいですか?
通知文や規程の整備であれば、個人情報は基本的に不要です。特定の社員に関する情報(氏名・評価・健康状態など)は入力しないことを原則にしてください。必要な場合は自社のセキュリティポリシーを確認してから判断してください。
Q4. 手順書を作っても実際の業務フローと合わなかったら意味がないのでは?
Claude Code の出力はあくまでドラフトです。「まず叩き台を作る」ことで、「何が足りないか」「どこが実態と違うか」を見つけやすくなります。ゼロから書くより、ドラフトを修正する方が圧倒的に速い。実態との照合は担当者が行うことが前提です。
Q5. 条文らしい文体で出力できますか?
できます。「第○条(目的)から始まる条文形式で」と指定するだけで、就業規則らしい文体で出力されます。「〜するものとする」「〜の限りではない」「前項の規定に関わらず」といった法律・規程特有の表現も自然に使った出力が出てきます。
5. 「属人化解消」に Claude Code をどう使うか
総務の業務が属人化する構造は単純です。「書く時間がない」→「口頭で引き継ぐ」→「担当者が変わる」→「また一から教える」というループです。
Claude Code はこのループを断ち切る手段になりえます。業務の手順を口頭で説明できる状態から、文書として整備した状態に持っていくコストを大幅に下げてくれるからです。
具体的には、以下の順序で文書整備を進めることをおすすめします。
- 問い合わせが多い業務から着手する(FAQを作れば即効性が高い)
- 担当者交代が近い業務を優先する(移転前・産休前などのタイミング)
- 年次で繰り返す業務はテンプレートとして保存する(健康診断案内・年末年始通知など)
- イレギュラー対応の文書もストックしておく(次回また使える可能性がある)
文書化の最大のメリットは「自分がいなくても組織が回る」ことです。総務担当者が体調不良や突然の休業になっても、文書があれば誰かが代替できます。この安心感は、総務という仕事を長続きさせる環境にもつながります。
6. テレワーク・移転・法改正——突然来るイレギュラーへの対応
総務で特に消耗するのが、「急に対応しなければいけない一回性の業務」です。
たとえば、「来週から全員テレワークになる」という経営判断が突然下りてくることがあります。規程を作り、社員に通知し、備品の貸し出し手順を整備し——これを数日でやり切らなければいけない場面があります。
あるいは、オフィス移転。引越し業者の手配と並行して、全社員への案内、駐車場・交通費ルールの変更通知、取引先への住所変更連絡と、文書系の作業だけで相当な量があります。
法改正対応も同様です。育児・介護休業法は近年毎年のように改正が入っており、「今年もまた就業規則を直さなければいけない」という状況が繰り返されます。
こうした場面で Claude Code が特に力を発揮します。「急いで叩き台を出してほしい」という状況に対して、方向性を整理して入力すれば、数分で骨格が出てきます。そこから事実確認・専門家確認・社内調整に集中できる状態が早く作れます。
7. 導入時に失敗しないためのポイント
ポイント1: 専門家確認をセットにする
Claude Code で規程の叩き台を作るからといって、社会保険労務士や顧問弁護士への確認を省略するべきではありません。「AIで作った叩き台を専門家に確認してもらう」という使い方が正しい位置づけです。むしろ、叩き台の品質が上がることで「この箇所だけ確認してください」という依頼の精度も上がり、専門家との確認作業も効率化されます。
ポイント2: 通知文・手順書はカテゴリ別にテンプレートをストックする
「オフィス移転通知」「健康診断のお知らせ」「慶弔見舞金規程改定」——総務でよく発生する文書の種類ごとに、うまくいった指示文をストックしておくと、次回から再利用できます。
ポイント3: 事実確認を省略しない
Claude Code の出力に、法令の具体的な条文番号・罰則規定・施行日などが含まれる場合は、必ず公式の法令情報で確認してください。「AIの出力を事実として扱わない」という姿勢が、安全な活用の基本です。
8. こんな人に特に向いています
- 社内規程の新規作成・改定依頼が突然来て、何から手をつければいいかわからない総務担当者
- 全社通知文を書くたびに「どう書けばいいか」で時間を使っている方
- 業務手順書が整備されておらず、担当者交代のたびに引き継ぎで苦労している職場
- 総務担当が1〜2名しかおらず、書類作成の仕事が溜まりがちな企業
- テレワーク規程・副業規程・ハラスメント防止規程など、新しい規程の整備が後回しになっている
- 顧問社労士に叩き台を渡して確認を依頼したいが、その叩き台を作る時間がない
向いていない用途について
就業規則・社内規程の最終版は、必ず専門家(社会保険労務士・弁護士)が確認した内容を使用してください。施行後の法令遵守状況の確認・社員からの法的相談への対応は、Claude Code ではなく専門家が行う必要があります。
9. claudecode道場で学ぶと何が変わるか
「総務の仕事にAIは関係ない」と思っていた方でも、実際に使ってみると「こんなに文書作成が速くなるとは思わなかった」という声は少なくありません。文書を書くことに時間がかかっていた担当者ほど、Claude Code の恩恵を感じやすいのではないかと思います。
claudecode道場は、非エンジニアの経営者・担当者が Claude Code を業務で使えるようになるための研修プラットフォームです。malna株式会社が運営しています。プログラミングの知識は一切不要で、全19章(2026年4月時点)のカリキュラムが揃っています。
- 規程・通知文・手順書など、総務業務の文書作成に特化した使い方を学べる
- 実際に手を動かしながら、自分の業務に引きつけて練習できる
- 「どう指示すれば実用的な出力が出るか」の感覚を掴めるカリキュラム
「何でも屋と言われる総務が、文書作成の効率化でようやく本質業務に集中できる」——そのきっかけを掴んでいただけますと幸いです。
10. まとめ
総務担当者にとって、社内規程・通知文・手順書の作成は専門性は高くないが時間のかかる業務です。「何を書けばいいかわからない」という状態から「叩き台がある状態」に速く移行できることが、Claude Code 活用の本質的な価値です。
繰り返し業務はテンプレートとして蓄積し、一回性のイレギュラー業務は素早く叩き台を出して専門家確認に入る——この2つの使い方を組み合わせることで、総務の文書作成にかかる時間は大幅に変わります。
書類を作る時間を減らして、施設管理・社員対応・経営サポートなど、総務ならではの本質的な仕事に集中できる時間を増やす。それが Claude Code 活用の目的です。
malna では、総務担当者を含む管理部門全般への Claude Code 導入支援を行っています。「自社の業務に合った使い方を一緒に考えてほしい」という場合は、ご相談ください。
※本記事に含まれる時間削減の数値は、特定の業務条件を前提とした参考値です。実際の効果は業務内容・環境・習熟度によって異なります。
