AI面接を導入するときは、サービスの選定と並行して、候補者への説明も準備しておきたいところです。
AI面接は、「誰が、何を見て、どう評価するのか」が候補者に伝わりにくい選考になりがちだと、当社は考えています。この記事では、候補者向けの説明文を準備するときの考え方と、その下書きをClaude Codeで作る手順を、採用担当者向けにまとめました。
候補者への説明文と評価基準の文書化に絞り、AI面接サービスの比較や選び方は含めていません。サービス側の論点は、当社が運営するAIタレント名鑑の「AI面接官とは?企業側の導入メリット・注意点」で整理しています。
法令や公的資料に関わる部分は、2026年10月21日に原文を確認した範囲で書いています。自社の運用が法令に適合するかどうかは、弁護士など専門家への確認が必要です。記事の内容は、一般的な情報の整理にとどまります。
先に結論
- この記事で原文を確認した範囲では、個人情報の利用目的の特定と、本人への通知または公表が定められています(個人情報保護法の第17条、第21条)。個人情報保護法にはほかにも事業者の義務があるため、義務の全体は専門家に確認してください。後半で挙げる説明項目は、当社が候補者の不安を減らすために勧める内容です
- Claude Codeに渡すのは、社内で決めた利用目的、評価項目、サービスの仕様メモです。候補者の氏名や回答内容といった個人情報は渡しません
- 出てきた文面と質問リストに加えて、応募書式と選考手順も、厚生労働省が示す、就職差別につながるおそれがある14事項に触れていないか、人による確認が欠かせません
候補者はAI面接の何に不安を感じているのか
「就活の教科書」編集部は、2025年5月19日から20日に、20代前半の就活経験者200人を対象に、インターネット調査を実施しています。当社は、就活の教科書の運営元と、記事を相互に紹介する取り決めがあります。調査結果のうち、AI面接に関する項目は次のとおりです。
- 面接官がAIであることに「とても不安に感じる」が19.5%、「やや不安に感じる」が44.5%で、合わせて64.0%
- AI面接と人間の面接官のどちらを受けたいかは、「人間の面接官が良い」が66.5%、「AI面接が良い」が14.0%
- AI面接に対するネガティブなイメージで多かったのは、「評価基準がわからない」が47.0%、「人間味がない」が46.0%
出典は、就活の教科書「録画面接のコツ5選」内の独自アンケートです。
これは回答者200人の単一の調査で、対象は20代前半の就活経験者、調査時点は2025年5月です。ここから読み取れるのは、この200人の回答に限った傾向までです。それでも、評価基準が見えにくいことが不安の一因になりうるという点は、説明文を準備する理由になると当社は考えています。
候補者への説明は、法令の定めと当社の推奨に分けて考える
候補者に何を伝えるかを決めるときは、この記事で確認した法令の定めと、当社が勧める項目を分けて考えます。
この記事で原文を確認した法律の定め
個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)の次の条文を、原文で確認しました。ほかにも事業者に関わる条文があり、ここに挙げたのは一部です。第21条には、第4項に適用除外の定めもあります。
- 第17条第1項: 個人情報取扱事業者は、利用目的を「できる限り特定しなければならない」と定めています
- 第21条第1項: 個人情報を取得した場合は、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、「速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない」との規定です
- 第21条第2項: 本人から直接書面(電磁的記録を含む)に記載された個人情報を取得する場合は、あらかじめ本人に利用目的を「明示しなければならない」と定められています
応募フォームへの入力が第21条第2項にあたるかどうかは、取得の形で変わると考えられます。第2項は、第1項にかかわらず、あらかじめ明示することを求める規定です。利用目的を公表しているだけでは足りない場面もあり得る、という点に注意が必要です。応募の入り口で利用目的を明示しておけば、この判断に迷わずに済みます。
AI面接の映像や音声は、個人情報にあたるのでしょうか。第2条第1項は、氏名や生年月日などの記述等によって特定の個人を識別できる情報を個人情報とし、この記述等に「音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項」も含めています。したがって、録画された映像や音声から応募者を識別できる場合は、この定義にあたり、個人情報として扱うことになります。識別できるかどうかはサービスの仕様によって変わるため、専門家に確認してください。
当社が勧める説明項目
次の項目は、当社の推奨です。候補者の不安を減らすために、説明文に入れておくことを勧めます。
- AIが担う範囲(例: 回答の文字起こし、回答内容の整理、評価項目ごとの一次的な整理)
- 人が担う範囲(例: 最終的な合否の判断、AIの出力の見直し)
- 評価項目と、それぞれで何を見るのか
- 取得する情報(映像、音声、回答文など)と、その使い道
- 保管期間と、削除の考え方
- AI面接以外の受け方(電話、対面など)があるかどうか
- 問い合わせ先
利用目的には、AIによる分析に使うかどうかも含めて書きます。「採用選考のため」という一文だけでは、候補者はAIが関わることに気づけません。どこまで具体的に書けば法令上足りるかは、専門家に確認してください。
Claude Codeに渡してよい情報と、渡さない情報
説明文の下書きにClaude Codeを使う前に、渡す情報を決めます。
個人情報保護委員会は、令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、個人情報取扱事業者に次の2点を注意喚起しています(要約です。正確な文言は原文を参照してください)。この文書は、事業者に注意を促す位置づけです。
- 生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること
- あらかじめ本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある。そのため、このような入力を行う場合は、サービスを提供する事業者が、その個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること
出典は、個人情報保護委員会の注意喚起(PDF)です。この記事は2023年6月付の文書を前提にしています。その後の更新は、2026年10月21日時点で確認していません。
この記事の手順は、次の運用を前提にします。
- 渡すもの: 社内で決めた利用目的、評価項目の一覧(質問と、見る観点)、サービスの仕様メモ(取得するデータ、保管期間)、すでにある候補者向け文面(個人情報を除いたひな形に限る)
- 渡さないもの: 候補者の氏名、連絡先、回答内容、録画の文字起こし、候補者からの問い合わせ本文
Claude Codeに渡した内容は、外部のサービスに送られる前提で扱います。データの取り扱いは、契約しているプランや設定によって異なります。入力が学習に使われるかどうかと、データが保存される期間は、別の論点です。公式ドキュメントの「Data usage」(英語)で、自社のプランの条件を、どちらも確認してください。Claude Codeを企業で使うときの運用ルールは、企業でClaude Codeを使うときのセキュリティ対策にまとめています。
説明文の下書きを作る4ステップ
ステップ1: 材料を1つのファイルにまとめる
ai-interview-notice-materials.md のような名前で、テキストファイルを作ります。次の内容を書き込みます。
- 面接の流れ(いつ、どこで、何分、何を聞くか)
- AIが行うこと、人が行うこと
- 利用目的(AIによる分析に使うかどうかを含む)
- 取得するデータと、保管期間
- 評価項目と、それぞれで何を見るのか
- AI面接以外の受け方(電話、対面など)の有無
- 問い合わせ先の部署名
サービスの仕様が分からない項目は、空欄にせず「未確認」と書いておくと、ステップ2の指示で【要確認】の目印が付きやすくなり、後の確認がしやすくなります。
ステップ2: Claude Codeに下書きを依頼する
候補者の資料を置いていない、この作業専用のフォルダに材料ファイルを置き、そのフォルダでClaude Codeを起動して、次のように指示します。
ai-interview-notice-materials.md を読んで、AI面接を受ける候補者向けの説明文を下書きしてください。
条件:
- 読み手は、就職活動中の学生です。専門用語を使わず、です・ます調で書いてください
- 材料に書かれていないことは書かないでください。分からない項目は【要確認】と書いてください
- AIが行うことと人が行うことは、材料に書かれたとおりに書いてください。事実と異なる表現や、実態を伏せる表現は使わないでください
- 精度を示す数値や、「公平」「安全」といった断定する表現は使わないでください
- 見出しを付けて、次の順に書いてください
1. 面接の流れ
2. AIが行うこと
3. 人が行うこと
4. 評価項目と、それぞれで何を見るのか
5. 取得する情報と、その使い道(利用目的)
6. 保管期間
7. 問い合わせ先
8. AI面接以外の受け方
出力の一部は、たとえば次のようになります(【架空の例】)。
## AIが行うこと
面接の録画から、お話しになった内容を文字に起こし、評価項目ごとに整理します。
## 人が行うこと
整理された内容を採用担当者が確認し、合否を判断します。AIだけで合否が決まることはありません。【要確認: 運用の実態と一致しているか】
「AIだけで合否が決まることはありません」のような文を使えるのは、実際の運用がそのとおりである場合だけです。Claude Codeは運用の実態を知りません。【要確認】が付いた箇所は、必ず人が現場に確認してください。
ステップ3: 質問リストと選考手順を14事項と照らし合わせる
厚生労働省は、就職差別につながるおそれがある具体的事項として、少なくとも次の14事項を挙げています。同じページの注記は「これらに限られるわけではありません」です。面接の質問リストと候補者向けの文面は、このうち質問や文面に表れうる11事項に照らして点検します。残る3事項は、身元調査、健康診断、応募書類の使用で、選考の方法に関するものです。応募書式と選考手順を、人が確認します。
- 本人に責任のない事項の把握: 本籍・出生地に関すること、住宅状況に関すること、家族に関すること、生活環境・家庭環境などに関すること
- 本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握: 宗教に関すること、人生観・生活信条などに関すること、思想に関すること、購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること、支持政党に関すること、尊敬する人物に関すること、労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
- 採用選考の方法: 身元調査などの実施、合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施、本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
出典は、厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」です。同じページには、応募者から「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもの(令和6年度にハローワークで把握した854件)のうち、「家族に関すること」の質問が多くを占める、という記載があります。面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いようだ、とも書かれています。
点検は、Claude Codeに一次確認を頼めます。
interview-questions.md の質問を1問ずつ、次の11事項に触れていないか点検してください。
11事項:
1. 本籍・出生地
2. 住宅状況
3. 家族
4. 生活環境・家庭環境
5. 宗教
6. 人生観・生活信条
7. 思想
8. 購読新聞・雑誌・愛読書
9. 支持政党
10. 尊敬する人物
11. 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動
触れる可能性がある質問は、理由を一文で書いてください。該当しなさそうな質問は「指摘なし」と書いてください。最終判断は人が行うので、断定せず「可能性があります」と書いてください。
この点検の対象は、質問リストに表れる11事項です。身元調査、健康診断、応募書類の使用は、選考の方法に関する事項なので、応募書式と選考手順を、人が確認します。
Claude Codeの指摘は参考情報です。「指摘なし」と出た質問に問題がない、という保証にはなりません。最終的な判断は、人事の責任者が行います。
ステップ4: 人と専門家が確認する
下書きは、次の順で確認します。
- 採用担当者が、運用の実態と一致しているかを確認する
- AI面接サービスの提供会社に、取得データ、保管期間、学習への利用の有無を確認する
- 個人情報の取り扱いに詳しい弁護士などの専門家が、利用目的の書き方を確認する
評価基準の説明文を書くときの考え方
厚生労働省は、採用選考の基本的な考え方として、応募者の基本的人権を尊重することと、応募者の適性・能力に基づいた基準で行うことを挙げています(公正な採用選考の基本)。
評価基準の説明文でも、この考え方を土台にします。
- 評価項目は、仕事に必要な適性・能力に関係するものに限る
- 項目ごとに「何を、どんな場面の回答から見るのか」を書く
- AIの出力は参考情報で、評価の最終判断は人が行うことを書く(運用がそうである場合に限る)
就活の教科書は、AI面接では回答内容に加えて表情や声のトーンなども評価される、と説明しています。評価の対象はサービスによって異なる可能性があるため、サービスの仕様を確認したうえで、そうした項目を評価に使うかどうかは、人が決めることです。
候補者からの問い合わせへの備え
説明文を出すと、候補者から質問が届きます。想定される質問の例は、次のとおりです。
- 録画は誰が見るのか
- AIの評価だけで不合格になることはあるのか
- 録画やデータを削除してほしい
回答の文面をClaude Codeで下書きするときも、候補者の問い合わせ本文は渡しません。作るのは質問の種類ごとの回答のひな形だけで、個別の問い合わせへの回答は、人が文面を整えます。削除や開示を求められた場合の対応は、専門家の確認を経た手順を先に決めておくことが前提です。
よくある失敗
- 利用目的が「採用選考のため」だけ: AIによる分析に使うことが候補者に伝わらず、説明文の意味が薄れかねません
- 説明文を作って終わりにする: サービスの仕様が変わったときに、説明文が実態とずれます。サービスの更新通知を担当者が受け取る仕組みを作っておくことが対策です
- 候補者の回答をそのままClaude Codeに貼る: 利用目的の範囲を超える可能性があります。上で述べたとおり、候補者の個人情報は渡しません
- Claude Codeの出力をそのまま公開する: 運用の実態と合わない文面が混じります。【要確認】の箇所は、人による確認が欠かせません
まとめ
AI面接の説明文は、サービス選定と並行して準備しておくと、導入後に説明で迷わずに済むと当社は考えています。AI面接に対するネガティブなイメージとして「評価基準がわからない」が47.0%で挙がった調査があります(2025年5月、20代前半の就活経験者が対象)。
準備は、利用目的の特定、候補者に伝える項目の仕分け(法令の定めと当社の推奨)、Claude Codeでの下書き、人と専門家による確認の順に進めます。Claude Codeに渡すのは社内のルールと仕様メモだけにして、候補者の個人情報は渡しません。
採用業務でのClaude Codeの使い方は、採用担当者のためのClaude Code完全活用ガイドと、面接評価の一貫性とClaude Codeで扱っています。採用領域にAIを導入する全体の進め方は、採用×AI導入ガイドを参照してください。
よくある質問
Q. 候補者の同意を得ないと、AI面接を実施できませんか。 A. 同意が必要かどうかは、この記事で確認した範囲では判断できません。取得する情報の内容と利用の仕方によって変わる可能性があるため、専門家に確認してください。この記事で原文を確認した第17条と第21条は、利用目的の特定と、本人への通知、公表、明示を定めています。当社が運営するAIタレント名鑑の記事では、法的な義務の有無は断定せず、選考案内の段階で告知し、同意を得る運用を必須として扱っています。
Q. 候補者向けの説明文は、どこに掲載すればよいですか。 A. 応募の入り口(募集要項や応募フォームの近く)と、面接の案内メールの両方に置くと、候補者が見落としにくくなります。第21条第1項は、利用目的をあらかじめ公表している場合を、通知の対象から除いています。一方、第2項は、本人から直接書面に記載された情報を取得する場合に、第1項にかかわらず、あらかじめ明示するよう定めています。応募フォームでの取得はこの第2項にあたる可能性があるため、公表だけで足りるかどうかは専門家に確認してください。
Q. 説明文の下書きに、Claude Codeを使わない方がよい場合はありますか。 A. 利用する端末やプランのデータの取り扱いが確認できていない場合は、先に確認してください。材料ファイルに社内の機密事項が多く含まれる場合も、渡す範囲を絞ります。
Q. 質問リストの点検は、Claude Codeだけで足りますか。 A. 足りません。Claude Codeの指摘は一次確認で、見落としもあります。厚生労働省の資料に照らして、人事の責任者が最終確認を行ってください。
Q. AI面接の評価結果を、Claude Codeで整理してもよいですか。 A. 評価結果には候補者の個人情報が含まれるため、この記事の手順の対象外です。個人データを含むプロンプトを入力する場合は、個人情報保護委員会の注意喚起にある確認が前提になります。



