税理士事務所での Claude Code 活用法。決算報告書のドラフトが3時間から30分になった
毎年2月〜3月、税理士事務所のスタッフの残業時間は跳ね上がります。
確定申告の繁忙期には、担当スタッフが夜10時・11時まで残業することは珍しくなく、「この時期は週末も出勤になる」という事務所も少なくありません。人員を増やせれば解決しますが、繁忙期のためだけに採用することは難しく、結局「今いるメンバーで乗り越える」という判断になりがちです。
この「繁忙期の壁」を崩すひとつの方法として、Claude Code の活用が注目されています。
1. 「数字は出せる。でも文章にする時間がない」という問題
税理士事務所の業務を大きく分けると、「数字を読む・分析する」という専門判断の仕事と、「その内容を顧問先にわかりやすく伝える」という文書化の仕事があります。
前者は税理士・会計士の専門性が発揮される領域です。しかし後者、つまり「分析結果を顧問先向けの言葉で文書化する」作業が、想像以上に時間を消費します。
典型的な声として、こういうものをよく耳にします。
- 「決算の数字の意味は理解できているが、社長に説明するための文章を整える時間がない」
- 「月次レポートは毎月送るべきだとわかっているが、顧問先の件数が増えると手が回らない」
- 「節税提案の内容は決まっている。ただそれを提案書として文書化するのが面倒で、口頭で済ませてしまっている」
Claude Code はこの「文書化の負荷」を引き受けることができます。専門判断は担当者が行い、その内容を顧問先向けの言葉で整える作業をClaude Code に任せるという分業です。
2. 顧問先への説明文書と事務所内の作業効率化——2つの軸で整理する
Claude Code を税理士事務所で活用する場面は、大きく2つに分けて考えると整理しやすくなります。
軸1:顧問先への説明文書の作成
顧問先に送る・渡す文書の初稿を効率的に作る用途です。
- 月次決算報告書の本文
- 決算説明書(年次)
- 節税提案書・税務アドバイス文書
- 融資支援用の事業計画書ドラフト
- 税制改正の影響についての説明レター
軸2:事務所内の作業効率化
事務所内での処理・整理を速くする用途です。
- 税務調査対応資料の整理・要約
- 顧問先別の経営課題メモの文書化
- 新入スタッフ向けの業務手順書の整備
- 過去の提案書・報告書のテンプレート化
この2軸を意識することで、「どこにClaude Code を使うべきか」が見えやすくなります。
3. 月次決算レポート・税務調査対応資料・融資支援書類の3種
税理士事務所でよく使われる3種類の文書について、具体的な活用方法を示します。
月次決算レポートの文章化
月次で送る数値レポートは、フォーマットが定まっているぶんClaude Code との相性が良い業務です。
担当者が分析した内容を簡条書きで入力し、「顧問先の社長向けに、わかりやすい言葉でまとめた月次報告文を書いて」と指示するだけで、数値の意味を噛み砕いた報告文の下書きが出てきます。
複数の顧問先に毎月レポートを送っている事務所では、この積み重ねが繁忙期以外の「平時の負担」を大きく減らします。
税務調査対応資料の整理
税務調査が入った際に必要になる「経緯の整理」「回答準備の資料」も、Claude Code が助けになる場面があります。
担当者が把握している事実と経緯を入力して「税務調査官への説明資料として、時系列で整理した文書を作って」と依頼することで、情報の整理に使う時間を短縮できます。
ただし、税務調査対応は法的・専門的な判断が伴います。Claude Code の出力はあくまで整理の補助として使い、内容の正確さと法的適合性は必ず担当税理士が確認してください。
融資支援書類のドラフト
顧問先の銀行融資を支援する場面では、事業計画書や資金繰り表の説明文書が必要になります。
財務状況と事業の状況を入力して「金融機関に提出する事業計画書の説明文を、〇〇業・従業員〇名の中小企業向けに書いて」と指示すれば、融資担当者に伝わりやすい文書の骨格が出てきます。
4. 税務専門用語を顧問先向けに言い換える実例
「専門用語をそのまま使うと顧問先に伝わらない」という課題は、どの事務所も持っています。
以下に、顧問先説明でよく出てくる専門用語と、わかりやすい言い換えの対比例を示します。Claude Code に「この用語を経営者向けにわかりやすく説明して」と依頼したときのイメージです。
| 正式名称(専門用語) | 顧問先向けの平易表現 |
|---|---|
| 減価償却費 | 機械や建物を少しずつ費用として認識する会計上の処理。実際の支出は伴わない |
| 繰越欠損金 | 過去に出た赤字を、今期の黒字から差し引いて税金を減らせる制度 |
| 中小企業投資促進税制 | 一定の機械設備を購入すると、税金が安くなる国の制度 |
| 役員報酬の損金算入 | 役員に払った給与が経費として認められ、会社の税金計算に使える |
| 貸倒引当金 | 回収できない可能性がある売掛金を、あらかじめ費用として計上しておくこと |
| 期末棚卸資産 | 決算日時点での在庫の金額 |
Claude Code は「この顧問先は製造業で財務知識は薄め」「この社長は数字に強い方なので専門用語でも大丈夫」といった文脈を渡すと、表現レベルを調整した文書を出力します。
5. 税理士法・守秘義務とAIの関係について
税理士法第38条では、税理士・税理士法人は業務上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らしてはならないと定められています。
Claude Code を含むAIツールを業務で使う場合、この守秘義務との関係を整理しておく必要があります。
整理すべき主な論点
まず、顧問先の具体的な財務数値・社名・個人情報をAIツールに入力することが、守秘義務の観点からどう評価されるかという点です。現時点では明確な法的判断が確立されているわけではありませんが、「業務上知り得た秘密」に該当する情報を外部サービスに送信することには慎重な判断が求められます。
次に、利用するサービスの利用規約とデータ保管ポリシーを確認することです。入力した情報がモデルの学習に使われるかどうか、データがどの国のサーバーに保管されるかによって、リスクの評価が変わります。
実務的な対応として推奨すること
- 顧問先の社名・代表者名などの特定情報は入力しない
- 財務数値は「売上が前期比X%増加した中小企業の決算」のように、特定企業を識別できない形に抽象化して入力する
- 事務所として「Claude Code への入力範囲のガイドライン」を定め、スタッフ全員が共通認識を持つ
この点は弁護士・税理士のAI活用ガイドラインが整備されつつある領域でもあります。事務所として利用方針を決める際は、日本税理士会連合会などの最新の見解も参照することを推奨します。
6. 繁忙期と閑散期での活用の差
繁忙期(2月〜3月)と閑散期では、Claude Code の使い方が変わってきます。
繁忙期(確定申告シーズン) 件数が集中するため、「1件あたりの文書化時間を短くする」ことが最優先です。決算報告書の初稿をClaude Code で出し、担当者が確認・修正するフローを確立しておくと、繁忙期の残業削減に直接つながります。
閑散期(4月〜1月) 「積み上げ」ができる時期です。各種説明文書のテンプレートを整備する・過去の優良な報告書をもとにプロンプトを改善する・新入スタッフ向けの業務手順書を整備するなど、次の繁忙期に備えた準備ができます。
閑散期にClaude Code の使い方を習熟し、プロンプトテンプレートを整備しておくことが、繁忙期に効果を発揮するかどうかを分けます。
7. claudecode道場で学ぶと何が変わるか
claudecode道場は、malna株式会社が運営する Claude Code の研修プラットフォームです。全19章(2026年4月時点)のカリキュラムがあり、プログラミングの知識は一切不要です。現在は無料で公開されています。
税理士・会計事務所のスタッフが「明日の業務から使える」レベルになることを目指した内容で、以下のようなことを学べます。
- 決算報告書・月次レポートの初稿を効率的に出すプロンプトの設計
- 顧問先の業種・規模・リテラシーに合わせた表現レベルの調整方法
- 事務所全体でプロンプトテンプレートを共有・管理する仕組み作り
「まず自分が使えるようになってみたい」という段階の方から、「事務所全体の業務フローに組み込みたい」という段階の方まで、どちらにも対応した内容です。
導入を個別に相談したい場合は、こちらからお問い合わせください。
8. まとめ
税理士・会計事務所における顧問先向けの文書作成は、「数字の分析」とは別の時間とエネルギーを要する仕事です。Claude Code は「専門判断の文書化」という作業の負荷を引き受け、担当者が本来の専門業務に集中できる時間を増やします。
守秘義務の観点から入力情報に注意が必要な点は他の業種と異なりますが、「特定顧客を識別できない情報のみを使う」という運用ルールを整備すれば、実務での活用は十分に可能です。
繁忙期に備えた閑散期の準備として、まず月次レポート1種類で試してみることをお勧めします。
※本記事に含まれる時間削減の数値は、特定の業務条件を前提とした参考値です。実際の効果は業務内容・環境・習熟度によって異なります。
