経営者が Claude Code を使ったら、全社方針メッセージと事業説明資料が3日から半日になった
1. 経営者の1日のうち、何時間が「書く仕事」に取られているか
経営者の1日のうち、何時間が「書く仕事」に取られているか——振り返ると意外に多い、と感じる方はいないでしょうか。
「決めることが仕事」だと思っていました。しかし実際には、「書くこと」に膨大な時間が取られています。年度の経営計画書。全社員に方針を伝えるためのメッセージ。資金調達時の事業説明文。採用ページに掲載する代表メッセージ。株主や金融機関へ現状と展望を説明する資料。取引先への挨拶状。これらはどれも「書けばいい」という話ではなく、「どう言語化するか」「どう構成するか」を考えながら書く必要があるため、思いのほか時間を食います。
当社でも、経営計画書の初稿を作るだけで丸3日かかっていた時期があります。考えるのに1日、言葉に落とすのにもう1日、社内確認と修正にさらに1日、という具合です。「内容は頭に入っている。でも文章にまとめる作業が詰まる」という経験は、多くの経営者に共通しているのではないでしょうか。
Claude Code を使うと、「頭の中にある考えを素早く文章の形にする」工程が大幅に短縮されます。ただし、使い方を間違えると「経営者の言葉」ではない文章が出てきてしまいます。この記事では、経営者が自分の思想と言葉を保ちながら、言語化の作業を短縮するための使い方を解説します。
2. 経営者が直接書く文書と、委託する文書を整理する
まず前提として、経営者が書く文書には「自分の言葉でなければ意味のないもの」と「情報が正確であれば誰が書いてもいいもの」の2種類があります。
自分の言葉でなければ意味のない文書
- 全社員向け方針発表文
- 採用ページの代表メッセージ
- 社員へのハードな決断を伝えるメッセージ(組織変更・リストラ等)
- 社外発信(インタビュー・コラム)の原稿
情報が正確であれば文体は問わない文書
- 金融機関向け事業説明書の骨格
- 株主向け事業報告書のドラフト
- VC向けのビジネスプラン(骨格部分)
- 取引先への定型連絡文
Claude Code は、この2種類のどちらにも使えますが、使い方が変わります。前者は「言語化の対話相手」として使い、後者は「文章の骨格を作ってもらう」ために使います。
3. 具体的な使い方:3つの文書タイプ
3.1 経営方針説明資料:頭の中にある考えをClaude Code と対話しながら整理する
経営方針説明資料で最も難しいのは「初稿を作るフェーズ」です。方針の箇条書きはある。数値目標もある。しかしそれを「なぜその方針なのか」「どう実現するのか」という文脈つきの文章に落とすところで止まる、という経験はないでしょうか。
Claude Code に「経営方針の要点と数値目標」を渡すと、計画書の骨格となる文章が出てきます。大切なのは、最初から完成を目指さず「たたき台として使う」という姿勢です。
入力例:
以下の情報をもとに、2026年度の経営計画書(社内向け)の初稿を作成してください。
【基本方針(3つ)】
1. 既存事業の収益基盤を固める(新規より既存深耕を優先)
2. 組織の土台を作る(評価制度・採用基準の整備)
3. 2027年度以降の新規事業検討に向けた情報収集
【数値目標】
- 売上: 前年比110%
- 営業利益率: 15%以上(現状12%)
- 人員: 現在9名 → 年度内12名
【伝えたいメッセージの核】
「攻めるより、守りを固める年にする。でもそれは後退ではなく、次の成長に向けた準備だ」
各セクション400〜500字程度。社内向けなので読みやすく平易な文体で。
出てきた初稿を読んで「この表現は自分らしくない」「ここの論理が飛んでいる」と感じた部分を修正指示で伝えると、自分の思想が反映された文書に近づきます。「AIが作った文章」ではなく「AIを使って自分が仕上げた文章」にするための、会話型の作業プロセスです。
3.2 社員へのメッセージ:「頭の中の話したいこと」を先に書き出す
全社員に届ける文章の難しさは独特です。経営層の言葉遣いと現場の受け取りやすさのバランスを取りながら、簡潔にまとめる必要があります。書きすぎると読まれず、短すぎると伝わらない。
当社が実際にやっているのは「先に話すように書いて、それをClaude Code で整える」という方法です。「何を伝えたいか」を箇条書きや話し言葉でざっくり書き出してから、Claude Code に「これを全社向けのメッセージとして整えてください」と渡します。
入力例(話すように書いたもの):
2025年度を振り返ると、正直目標には届かなかった。
でも、評価制度の骨格を作れたことと、主要クライアントとの関係を深め直せたことは、
思っていたより大きな成果だったと思っている。
2026年度のテーマは「深耕と整備」にする。新しいことを増やすよりも、
今あるものをしっかり動かす1年にしたい。
評価制度が4月から本格的に走り出す。メンバーには前向きに受け取ってほしい。
新メンバーも3名迎える予定。チームとして歓迎してほしい。
これをSlack投稿向けの全社メッセージにしてください。
代表からのメッセージとして、改まりすぎず、飾らず、正直に伝える文体で。800字程度。
この方法のメリットは「自分の思想がベースにある」ことです。Claude Code は言語化を整えるだけで、考えの中身は経営者自身のものになります。
3.3 VC・金融機関向け事業説明文:「誰が読むか」を徹底的に意識した文章
資金調達・融資審査・IR資料では、読む相手が明確です。VC向けなら「市場規模・競合優位性・スケーラビリティ」、銀行の融資審査なら「返済能力・経営者の信頼性・事業の安定性」が重視されます。
この「読む相手が何を見ているか」を意識した文章を、自分で書こうとすると「相手目線への切り替え」に時間がかかります。Claude Code に「誰が読む文書か」を明示して渡すと、その読者が重視する観点で文章を構成してくれます。
以下の情報をもとに、銀行の融資審査を想定した事業説明書(概要部分)を作成してください。
読む人: 地方銀行の融資担当者(返済能力と経営の安定性を重視)
事業の概要: [自社の事業内容を箇条書きで]
財務状況: [概算の売上・利益・借入残高]
強み・差別化要因: [箇条書きで]
形式: A4で1〜2ページ。数字と根拠を前面に、感情的な表現は省く。
出てきた骨格に、実際の数値と自社特有の文脈を加えて仕上げる形になります。
4. 「自分の思想をAIに任せることへの違和感」をどう解消するか
Claude Code を使うことに対して「経営者の言葉をAIに書かせていいのか」という違和感を持つ方は少なくないと思います。この違和感は正直だと思っています。
ただ、実際にやってみると気づくのは「Claude Code は自分が渡した情報しか使えない」という事実です。経営方針・考え方・メッセージの方向性を決めるのは経営者自身であり、Claude Code にできるのは「それを文章の形に整えること」だけです。
「弁護士に文書作成を依頼する」「広報担当者に原稿を書かせる」という行為と本質的に変わりません。経営者の考えをインプットとして、文章化の作業を手伝ってもらう——これが正しい位置づけです。
そのため、「まず自分の考えを箇条書きで書き出してからClaude Code に渡す」という手順を踏むことを推奨します。Claude Code への入力自体が「自分の思考の整理」になるからです。
5. よくある疑問と注意点
Q1. 経営計画書の内容をAIに渡して情報漏えいは大丈夫ですか?
機密性の高い数値や固有名詞については、実際の数値をダミー値に変えて骨格だけを作り、後から実数を埋める方法が有効です。社内のセキュリティポリシーを確認した上で利用してください。方針や構成の骨格を作るフェーズでは、具体的な数値を入れなくても有用な初稿が得られます。
Q2. 出てきた文章をそのまま使えますか?
「たたき台」として使う前提が適切です。言葉のニュアンスや自社独自の文脈は最終的に自分で加えてください。「ゼロから書く」よりも「たたき台を編集する」の方がはるかに速い、という事実が重要です。特に経営者の言葉として社外発信するものは、必ず自分でチェックして、自分らしい表現に直してください。
Q3. 財務諸表や決算書の作成にも使えますか?
財務数値の計算・集計が必要なものは、Excel や Google スプレッドシートを使う方が適切です。Claude Code はあくまで「文章・構成の言語化」ツールです。
Q4. プログラミングの知識がなくても使えますか?
使えます。Claude Code という名前から「コーディングのツール」と思われがちですが、文書作成・文章整理・言語化支援として使うことができます。claudecode道場では、非エンジニアの経営者が実際に業務で使えるようになるカリキュラムを提供しています。
6. 導入で失敗しないための3つのポイント
ポイント1:「文章を作ってもらう」ではなく「考えを言語化してもらう」という認識で使う
Claude Code が出力する文章は、あくまで「あなたが渡した情報の言語化」です。渡す情報の質が出力の質を決めます。情報を整理して渡すこと自体が経営者の仕事であり、そのアウトプットをClaude Code が文章にする、という役割分担が正しいあり方です。
ポイント2:「自分のテンプレート」を育てる
繰り返し作る文書(年度計画書・全社メッセージ・投資家向け説明)については、一度うまくいった入力文をテンプレートとして保存しておくことを推奨します。次回は数値と方針を更新するだけで、同じ品質の初稿が出てきます。Claude Code のプロジェクト機能を使えば、自社の文体や用語をある程度反映させることもできます。
ポイント3:「話すように書いてから整えてもらう」順序を習慣にする
特に社員向けメッセージや経営者の言葉として出す文章は「先に話すように書いて、それを整えてもらう」という順序が大切です。Claude Code が最初に書いた文章を「これで出そう」と思ってしまうと、自分の言葉ではない文章が出てしまいます。考えの中身は自分が作り、言語化の作業を手伝ってもらう、という使い方が長続きします。
7. こんな経営者に特に向いています
- 経営計画書や方針文書を自分で書くことが多い経営者・代表
- 「考えはまとまっているが、言葉にするのに時間がかかる」と感じている方
- 全社向けメッセージや社内連絡文を定期的に出す立場にある方
- 投資家・金融機関・取引先への説明文書を月に複数回作成している方
- 秘書やアシスタントがおらず、経営者本人が文書を作成している方
- 「書くことに取られる時間を、判断と対話に使いたい」と感じている方
法的拘束力が求められる契約書・定款の最終版の作成には、必ず専門家の確認を経てください。Claude Code の出力は、あくまで文書の骨格です。
8. claudecode道場で学ぶと何が変わるか
claudecode道場は、非エンジニアのビジネスパーソンが Claude Code を業務で使えるようになるための研修プラットフォームです。malna株式会社が運営しています。プログラミングの知識は一切不要です。全19章(2026年4月時点)を無料で学べます。
経営計画書・全社メッセージ・投資家説明資料などのビジネス文書に特化した実践的なカリキュラムで、「学んで終わり」ではなく「明日から使える」状態を目指しています。経営者が直接受講することで、チームへの展開方法まで含めて体系的に学べます。
9. まとめ
経営者にとって Claude Code は、「書くことに使う時間」を「考えることに使う時間」に変えるツールです。
経営方針説明資料・全社員向けメッセージ・VC・金融機関向け事業説明文——いずれも「考えは頭にある、言語化が詰まる」という場面に直接効きます。「先に話すように書いてから整えてもらう」という使い方を習慣にすると、自分の言葉を保ちながら書く時間を大幅に短縮できます。
まずは小さいところから——「来月の全社ミーティングで伝えたいこと」を箇条書きにして渡してみることから始めてみてください。最初の出力を見た瞬間、使い方のイメージがつかめると思います。
Claude Code の活用やチームへの展開について相談したい場合は、Claude Code導入支援についてmalnaに相談する からお気軽にどうぞ。
※本記事に含まれる時間短縮の数値は、特定の業務条件を前提とした参考値です。実際の効果は業務内容・環境・習熟度によって異なります。
